研究課題/領域番号 |
16K13432
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
小松 裕子 富山大学, 芸術文化学部, 准教授 (30212468)
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研究分担者 |
小松 研治 富山大学, 芸術文化学部, 教授 (10186794)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ICT支援 / 高齢者 / 障害者 / ボランティア / 茶道 |
研究実績の概要 |
高度に情報化が進んだ社会では、それを享受することで豊かな生活を得ることができるという場合もあるが、一方で、十分に適応できない高齢者や障害者などに代表される情報弱者は、やがて情報社会や技術への拒否や嫌悪を抱くことにつながる可能性もある。これらに処すべき新しい情報支援方法の一つとして、支援者および被支援者が残すさまざまな「痕跡」に着目し、その痕跡を解釈・分析する手立てに、おもいやりの究極と言われる茶道との共通項(相手への配慮、場づくり、そのお陰を読み取る力)を導きだして活用することが、研究全体の目的である。 初年度である本年度は、まず、相互の「お陰」の気持ちを単なる心の問題ではなく、客観的に配置された「痕跡」と捉え直すために、情報支援の拠りどころを探る基礎資料を得ることを目的に活動した。特に、茶道に関する調査では、茶道が目指す「一座建立」「一期一会」が成立するには、環境の設えが亭主と客のコミュニケーションを育むため、環境に思いを痕跡としてどのように残すのかがポイントであり、それには、歴史・道具・所作それぞれが深く影響しており、今後より茶道の歴史や道具、亭主と客の関係を深く調査する必要性があることが分かった。また、高齢者や視覚障害者、聴覚障碍者への支援講座(ICT指導者養成講座、ICT講座)を開催するなかで、指導者を養成する場合も含めた、適切なテキストの必要性や講座環境の重要性を改めて認識することとなった。 これらの活動から、「ものに思いを込める」「その思いを受け止める」関係を今後どのようにICT支援に活かすべきか、研究の明確な方向性が発見できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の平成28年度は、研究全体の準備調査と計画を練ることと、基礎資料を得ることを目的に活動した。また、調査の全体計画を見直し、調査すべきこと、調査相手の再検討を実施した。文献調査では、情報機器の動向や福祉分野の調査が十分にできなかった反面、茶道に関する図書や文献を中心にした情報収集では、茶道が目指す「一座建立」「一期一会」が成立するには、環境に思いを痕跡としてどのように残すのかがポイントであり、それには、茶道の歴史や道具、亭主と客の関係をより深く見ていく必要性があることが分かった。また、富山県内のボランティア団体で高齢者および視覚障害者・聴覚障害者がモバイルコンピュータを利用する状況をICT講座主催者として観察した。その場合、適切な講座環境とともに、座をうまく進めるテキストが非常に有用であると認識を深めた。今後「ものに思いを込める」「その思いを受け止める」関係を教材と環境に配置し、どのように支援に活かすかという研究の新しい方向性が発見できたことから、ほぼ順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続き文献や実地調査を行うが、1年目に十分にできなかった情報技術の動向を支援に取り入れることも含め、「お陰」情報をできるだけ多く収集する。また、ICT講座を引き続き実施することで、共感の気持ちやお陰さまの気持ちを、実際の現場情報と照らし合わせることでその有効性を検討する。具体的な成果物として、新たに、1年目の調査で必要性が浮かび上がった支援テキスト作成の基本設計を始める。一方、収集した情報を掲載するお陰web(DB)は既存のwebを改善することを検討する。これらは、最終年度に一般公開するとともに、実際の講習会で適用し、その適用可能性を探る。その効果や課題、他分野への適用の問題などのデータを得て考察する。また、他のボランティア分野、福祉・教育分野への適用可能性を評価する。指針及び痕跡分析は、固定化するのではなく、構築したweb上でTrial&Errorの手法で改善させる方法をとる。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度必要な物品や旅費および謝金を使用した結果、わずかに残金が出たもの。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額(B-A)は2,396円と少額であるため、計画に影響はない。情報技術の文献等に使用したいと考えている。
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備考 |
富山大学紀要web公開URL(オープンアクセス) http://www.tad.u-toyama.ac.jp/outline/research/pdf/bulletin11/p38-50.pdf http://www.tad.u-toyama.ac.jp/outline/research/pdf/bulletin11/p110-117.pdf
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