本研究では情報化が急速に進む中で、技術にうまく対応できない人々に対して、自己の努力や情報技術の進化に求めるのではなく、支援環境や支援者や被支援者相互の配慮、感謝の気持ち(お陰)をよりどころとする支援の在り方を探る。それらは支援環境に残された「痕跡」から抽出できるということを基点としている。そのヒントを茶道に求めることを研究の方針として定め活動している。 今年度は、調査の全体計画を見直し、調査すべきこと、調査相手の再検討を実施し、引き続き「ものに思いを込める」「その思いを受け止める」関係を支援に生かすヒントを茶道の茶会(藪ノ内流)実地を主に収集した文献の検証をすすめた。 また、前年度に収集した高齢者や障害者へのICT講座を通した支援の環境や会話、道具を整理し、前年度に指摘した支援テキストの重要性について、当初の最終年度(平成30年度)で完成させる計画と準備をはじめた。茶道に使われる道具や日本の伝統的な工芸についての調査も行った。当然ながら、茶道のもてなしや亭主と客の関係や道具との関係を直接ICT支援に置き換えて直接利用することは難しいものの、それらのポイントをテキストや講習計画に盛り込めるように整理した。これらの研究成果は中間報告として学会で発表した。 また、実際のICT支援の講習の中で試験的に盛り込み、ほかの講師や支援者と情報交換することで講習内容を洗練してきた。これらをデータベースやwebにてだれもが情報共有できる支援システムをつくることが目標ではあったが、年度途中で早期退職が決定し、本年で最終年度となり、次年度へその成果を継続させることができなくなった。ただし、これまでの研究成果は必要に応じてほかの研究者へ公開する準備ができている。代表者は今後はNPO法人で支援活動を継続し、本成果を実践的に活用する予定である。
|