研究課題/領域番号 |
16K13435
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
野村 恭代 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 准教授 (10461188)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 当事者専門職 / ピア・スタッフ / 新たな担い手 / 地域精神保健福祉 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、2012~2015年度に取り組んだ科学研究費(若手研究(B):施設コンフリクトとソーシャル・キャピタルとの相関に関する比較実証研究)から得られた研究成果をもとに、地域精神保健福祉の推進に向けた当事者としての経験に基づく新たな担い手の可能性を実証的に明らかにすることにある。具体的には、精神障害者である当事者が当事者ゆえに持ち得る専門的な知見を、地域を基盤として発揮できる可能性を明らかにすることである。 本研究の目的である「地域精神保健福祉における新たな担い手」の創造に向けて、社会福祉法人ビタ・フェリーチェの協力のもと、共同研究体制を形成して取り組みを進めている。 平成29年度は、当事者としての経験に基づく担い手の養成に向けて、社会福祉法人スタッフ、当事者専門職、研究者がチームとなり、定期的にプロジェクト会議を開催した。また、ピア・スタッフへの聞き取り調査も実施し、当事者専門職養成に係る自治体及び社会福祉法人による側面的支援のあり方についても検討を行った。さらに、ピア・スタッフへの聞き取り調査の結果を分析し、当事者専門職の養成や配置において想定される課題を洗い出すとともに、経験を基盤とした専門家の担う役割について分析を行った。 段階ごとの具体的取り組みの概要は、次のとおりである。 [段階Ⅰ]「養成プログラム作成チーム」を定期的に開催(月1回程度)。ここでは、①地域での早期発見・早期対応のためのチーム体制、②地域での精神保健福祉課題の解決、③地域住民と専門職の協働による課題解決等について明確にすることを目的としている。 [段階Ⅱ]「側面的支援検討チーム」を定期的に開催する(月1回程度)。ここでは、①行政機構(機能)への経験を基盤とした専門家の配置に向けた検討、②研修体制の検証、③市民への経験を基盤とした専門家の啓発等について検討する。(継続)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「段階Ⅰ」の「養成プログラム作成チーム」は定期的に開催することができ、毎回のプロジェクト会議には、現に法人に雇用されている当事者スタッフの参画も得られている。また、法人内の複数の専門職も参画し、①精神保健福祉課題の解決における当事者スタッフの役割、②当事者スタッフに対する法人としての配慮の有無と内容、③地域住民と専門職の協働による課題解決等について検討を進めているところであり、おおむね順調に進展していると言える。 しかし、「段階Ⅱ」の「側面的支援検討チーム」については、①行政機構(機能)への経験を基盤とした専門家の配置に向けた検討、②研修体制の検証、③市民への経験を基盤とした専門家の啓発等についての検討は着手する段階であり、当初の計画よりも遅れている状況である。 以上の理由により、現在までの進捗状況は「やや遅れている」状態であると考える。しかし、平成30年度内には十分に遂行可能であり、焦らず丁寧に進めていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、本研究の最終年度である。そのため今年度は、「段階Ⅰ」と「段階Ⅱ」を融合させ、「地域精神保健福祉における新たな担い手による支援体制」の構築を試みる。その過程では、専門職及び地域住民による合同勉強会を開催し、総合的に検討することも想定している。本モデルは、地域における障害者への理解を促すものでもあり、その過程では地域住民の関わりを包含することが必要不可欠であるため、住民参画を促進する方法を明確にすることを重視したいと考えている。また、この一連の取り組みにより、「住民の障害者理解を推進させる中核的担い手」を養成することも副次的に意図している。地域精神保健福祉における新たな担い手による支援体制の評価及び総合的な検証過程においては、中核的担い手に位置する住民も参画するかたちで実施する予定である。さらに、他地域での具体的な取り組みについても検討する。 この時点で学会発表を行い、研究者とのディスカッションを行う。学会での発表及びディスカッションを繰り返すことでさらなる理論の精緻化を目指す。さらに、本研究で得られた成果を論文としてまとめるとともに、研究成果の公開の一環として詳細な調査報告書を作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当事者スタッフへの聞き取り調査にかかる調査費が、当初予定していた金額よりもかなり抑えられたことが最大の理由である。また、ピア・スタッフの全国会議等への参加も予定していたが、平成29年度は日程等の理由により参加が不可能になったことも理由である。ピア・スタッフ関連の会議や研修会には平成30年度に参加する予定であり、平成29年度に使用しなかった費用を使用することになる。さらに、平成30年度には本研究に係る報告書を作成し、全国調査で回答の得られた施設及び事業所に配布することも想定している。
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