研究課題/領域番号 |
16K13437
|
研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
竹本 与志人 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (70510080)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 認知症 / 生活困窮 / 介護支援専門員 / 社会保障制度 |
研究実績の概要 |
A県ならびにB府内にある11の居宅介護支援事業所に勤務する介護支援専門員13名を対象に個別またはグループインタビューを実施した。インタビューでは居宅介護支援を担当する認知症者の「経済的な理由から介護サービスの利用を制限する状況」について尋ねた。分析の結果、介護サービスの利用を制限する認知症者の多くが脆弱な経済基盤の下で療養生活を送っていた。脆弱な経済基盤は借金や同居家族の収入状況の変化により発生・強化され,金銭管理が困難な状態や経済的搾取、介護サービス等の利用料の支払いにより脆弱な経済基盤が揺らいだ結果、介護サービスの利用制限に至る過程が推測された。介護支援専門員はこれらの状況に対して経済支援を試みていたが、認知症者やその家族のワーカビリティの低さ、介護支援専門員の社会保障制度に関する知識不足、活用可能な社会保障制度の乏しさ、関係機関の協力度の低さなどが支援の困難度を高めていた。 以上の質的調査の結果をふまえ、調査項目を作成してアンケート調査を実施した。調査対象はA県内の全居宅介護支援事業所656ヶ所の介護支援専門員(各1名)であり、平成29年3月末現在294名分の調査票を回収している(回収率:44.8%)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
A県ならびにB府内にある11の居宅介護支援事業所に勤務する介護支援専門員13名を対象に個別またはグループインタビューを実施した。その結果、これらの質的調査により推測された認知症者の経済状況等を一般化する必要性があると考え、量的調査を計画・実行することにした。具体的には、質的調査を基に調査項目を作成し、A県内の全居宅介護支援事業所を対象に経済問題を抱える利用者の状況に関する項目、社会保障制度の知識に関する項目などを設定し、郵送調査を実施した。現在データを整理・分析しているところである。本結果をふまえて事例を作成し、平成29年度実施予定の量的調査に盛り込む予定である。以上の成果・経過より、当初の研究計画よりも高い精度の研究計画になっていると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は認知症関連の学会等に参加あるいは研究経過の発表を行い(研究代表者ならびに連携研究者、院生等の研究協力者)、意見聴収・情報収集を行い、最終的な調査票案を作成する。調査は無記名自記式の郵送調査とし、中四国、九州、沖縄の居宅介護支援事業所約8,000ヶ所より層化二段階抽出法を用いて2,000ヶ所を抽出し、各事業所に2名ずつ、計4,000名を対象に実施することを計画している(質問紙調査)。 質問紙の回収後は、データ入力、データクリーニングを行う。解析方法については、構造方程式モデリングや潜在クラス分析等を用いて、調査対象者における社会保障制度の選定能力の状況を明らかにする。 平成30年度は郵送調査の結果を分析し、成果発表を行うとともに研究報告書の作成等を行う。当初の計画に則り、実施予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は質的研究を中心に実施したが、インタビュー対象者の中には事業所の規程等により、謝金を受け取ることができない人があった。また、平成29年度に実施予定の量的調査では、広範囲かつ数多くの事業所を対象とするため、特に返送費に関しては予定以上の回収率になった場合に助成金が不足する可能性もある。さらに回収率が低い場合は計画に従い、調査範囲を拡大することも予定している。それらを鑑み、平成28年度の助成金の使用額を減額し、次年度への予算に持ち越すこととした。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に実施予定の量的調査の経費に補填等に使用する予定である。
|