研究実績の概要 |
最終年度は、前年度実施した量的調査で得られたデータの分析ならびに学会発表、論文投稿を行った。 最終的に量的調査で回収されたデータ数は、認知症高齢者の事例を配付した1,500人対象の調査では507人分(事業所廃止数24、実質配付数1,476通、回収率:34.3%)、若年性認知症者の事例を配付した1,500人対象の調査では478人分であった(事業所廃止数28、実質配付数1,472通、回収率:32.5%)。 約半数の介護支援専門員が経済問題ゆえに必要な介護サービスの導入を制限している、あるいは導入できない利用者を担当していた。経済問題の軽減・解決に対応し得る社会保障制度に関しては、知識不足を感じる介護支援専門員が約8割を占めていた。 事例における経済問題の軽減・解決のための社会保障制度の利用の可否に関する回答を分析した結果、認知症高齢者の事例を付した回答者の正答は8制度中平均3.7制度であり、全問正答した介護支援専門員はわずか2人(0.4%)であった。若年性認知症者の事例を付した回答者の正答は8制度平均4.0制度であり、全問正答した介護支援専門員は5人(1.2%)に留まった。本調査により居宅介護支援事業所の介護支援専門員は、経済問題を抱える利用者への経済支援において社会保障制度の選定に難渋している現状が可視化されることとなった。 介護支援専門員の研修に関しては、まずは縦割りの社会保障制度の講義設定が必要であり、社会保障に関する基礎的な理論に加え、各種制度の根拠法や詳細な対象者の基準、相談窓口などを教授することが求められる。そして横断的な制度活用が可能となるよう、事例を用いた演習が必要であり、典型的な経済問題をかかえる事例を複数設定し、アセスメント方法や経済問題の軽減・解決につながる各種制度の活用方法を実践的に学ぶことのできる機会が求められるといえる。
|