研究実績の概要 |
平成30年度には、これまでに整備してきたデータセットを踏まえて、前年度までの分析課題を継続しながら、それぞれのデータセットを用いて成果の学会発表・論文化を進めた。 最終年度の重点課題としていた行政が保有する多時点の要介護給付データに基づくプログラム評価に関しては、愛知県下の自治体において2006年4月から2016年11月までの11年間について3ヶ月毎の43時点の介護給付実績データと、2006年時点で要介護認定を受けていない高齢者を対象にした調査データを統合したデータセット(n=5,377)を構築した。分析の結果、趣味の会・スポーツの会・ボランティアの会のいずれも全く参加していない人と比べ、参加している人々では調査後11年間の要介護期間は短い傾向にあることが改めて確認された。たとえば、趣味の会に全く参加していない群では追跡期間中、要支援・要介護状態は平均14.1ヶ月だったのに対し、週1回以上の群では10.6ヶ月であった。ベースライン時点での諸特性を統計学的に考慮したうえでも、地域活動への参加頻度はその後、11年間の介護費用累計額に対して有意な関連を示していた。具体的には、趣味の会に週1回以上参加している群は、全く参加していない群と比べ、11年間の介護費用累計額は35万円程度/人低い傾向にあった。同様に、スポーツの会についても週1回以上参加している群では61万円程度/人低いという結果であった。ボランティアの会への参加については週1回以上の参加ではなく、年数回程度の参加の方がその後の介護費用が低い傾向にあった。なお、本結果はいくつかの推計モデルによっても大きな違いは確認されなかった。 対象地域(高齢者人口が約1万人の自治体)において、それぞれの会に週1回以上参加する人を10%増やすことができた場合、11年間で8000万円程度の介護費用を削減できる可能性が示唆された。
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