本研究課題は、『障害のある子ども達に活動・参加意欲を芽生えさせるための、音楽形態の構築』である。 第2年目の研究成果は、第1年目で取得できた障害への音楽介入の効果の調査データを元に、スウェーデンで音楽療育調査を行い、それとの比較検討をすることができ、十分な成果があった。 本研究最終年度は、今までの研究データから「障害のある子ども達が好むリズム」に焦点を当て、それらのリズムが多く含まれる楽曲の楽譜を出版した。子ども達は時に応じて心の変化を見せる。そういった時に、楽曲の中からその子どもの状態に合致する部分を抜き出して聴かせてみたり、或いはその部分を一緒に打楽器を使用して演奏する使用方法である。これは、一定のリズムから成る曲よりも幅広く応用的に演奏できる利点がある。ヴィヴァルディヴァイオリン協奏曲集「四季」とグリーグ(17曲)及びブラームス(11曲)の曲集である。ヴィヴァルディはヴァイオリンのメロディーラインが様々なリズムで作られており、またテーマが春夏秋冬であるため、イメージも湧きやすい。グリーグは叙情的な旋律と分かりやすいタイトルから感じる部分が大きい。ブラームスは重厚なハーモニーによるまた違った雰囲気を醸し出す。これらを障害のある子どもに聴かせてみて、踊り喜ぶ様子や一緒に口ずさむ様子が伺えた。 当初の研究計画は、最終年度にICFの機能を使用して、子ども達の持つ感覚等を数値化することであったが、研究が進行するにつれて障害は種別はできても、その子どもの持つ感性は様々であり、数値化できたとしてもそれは決定的なものではないことが分かり得た。生きた人間が喜び、楽しみ、参加意欲を芽生えさせるための音楽を、その子どもに応じた形態で演奏することこそが必要なことだと確信に至った。 研究は終了するが、今後の課題として更に音楽療育を多角的に探求することが必要であると考える。
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