研究課題/領域番号 |
16K13452
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研究機関 | 中部学院大学短期大学部 |
研究代表者 |
平松 喜代江 中部学院大学短期大学部, 幼児教育学科, 准教授 (00645442)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 面接調査 / 事例研究 / 大学進学 / 支援者 / 進学実現までの経過 / 希望喪失と支援 |
研究実績の概要 |
「児童養護施設退所者の大学進学実現の経過に関する検討」 児童養護施設退所者の大学進学実現までの経過を検討するために、大学に進学した児童養護施設退所者、大学進学を希望している児童養護施設入所者、進路指導を担当している児童養護施設職員に面接調査を実施した。面接調査の内容は、大学に進学した児童養護施設退所者には、「児童養護施設での生活」と「大学在学中の生活」に分けて、各生活における「家族の状況」、「生活状況」、「進路状況」、「経済状況」、「社会資源」、「本人の心情」、大学進学を希望している児童養護施設入所者には、「幼少期の進路希望」「児童養護施設での生活」「大学進学への準備」とした。また、進路指導を担当している児童養護施設職員には、「入所児童への進路選択の支援」とした。そして、面接内容は「家族の状況」、「生活状況」、「進路状況」、「経済状況」、「社会資源」、「本人の心情」の6つの項目に分類し、それらを「小学校期」、「中学校期」、「高等学校期」の3つの時期に分けて、総括表を作成した。そして、総括表から、小学校期、中学校期、高等学校期の各時期における希望する進路に関して、「進路希望の有無」、その「契機」、具体的な進路の「名称」に分けて経過を整理した。 その研究成果として、「入所者が進学に対して希望を喪失している状態であってもそばにいてくれる大人の存在によって、再び希望をもてる」ことが指摘できた。具体的には、希望を喪失した場合、その時期において支援が行われており、その支援には2種類の支援があることがわかった。その支援によって、再び希望をもてるようになったことなどが指摘できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度前半は、関係資料収集や文献研究を行い、国による社会的養護に関わる支援の方向性および大学進学に関する傾向についてまとめることができた。それと並行して、平成28年度に当事者に面接調査した内容をもとに質問紙調査の準備を行い、大学進学を希望している児童養護施設入所者および進路指導を担当している児童養護施設職員に対して質問紙調査を実施した。平成28年度当初の予定では、質問紙調査を全国の児童養護施設を対象としていたが、その後の面接調査につなげることを目的に、調査対象者を面接調査が可能な東海3県の事例に限定した。児童養護施設職員に対する質問紙調査結果から、入所者のうち大学等進学をした者は4割程度いたが、大学進学を希望したが実現しなかった者も同程度いることがわかった。この理由には、自分のおかれている状況や環境によるものだけではなく、「施設が進学を後押しする風潮ではなかった」ことが明らかになった。これは、先行研究が指摘するように「施設間における進学率の著しい差」がみられたとする原因の一つと考えられ、さらに、児童養護施設入所者に対する質問紙調査結果から、進路決定に至る経過には多くの相談相手が介在していたことがわかった。そして、将来の夢を実現するために必要な資格取得のために大学進学を希望していた者が約70%であった。大学進学と将来の職業が直結している事例が多かった。 後半は、大学に進学した児童養護施設退所者1名、大学進学を希望している児童養護施設入所者5名、進路指導を担当している児童養護施設職員5名に面接調査を実施した。面接結果について総括表を作成し、小学校期、中学校期、高等学校期の各時期における希望する進路に関して、「進路希望の有無」、その「契機」、具体的な進路の「名称」に分けて経過を整理した。さらに、昨年度に実施した面接調査結果も踏まえて、大学進学実現の経過についてまとめている。
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今後の研究の推進方策 |
「児童養護施設入所者の就学保障」について3年間の研究のまとめを行う。 平成29年度の研究のまとめとして「児童養護施設退所者の大学進学実現の経過」について図式化したところ、大学進学を希望し実現した事例だけではなく、希望したが実現しなかった事例についての検討も必要であることが明確となった。どの時期に希望を喪失し、再び希望をもつための支援の有無についても調査していく。そのため、大学に進学をしなかった児童養護施設退所者への面接調査の準備を進めていく。これまでの面接調査および質問紙調査については、社会的養護下にいる者への大学進学支援の団体から全面的に協力を得ていたが、大学に進学しなかった児童養護施設退所者は多数いるため、調査協力者を得られるか難航が予測される。 平成28年度に実施した大学進学を希望している児童養護施設入所者とその施設職員への質問紙調査の結果の検討をさらに深めていく。質問紙調査の結果から、児童養護施設入所者にとっての大学進学希望と将来の職業が直結している事例が多いことが捉えられたことから、児童養護施設入所者にとっての大学で学ぶ意義および進学の位置づけを明確にしていく。さらに、進路指導を担当している児童養護施設職員への面接調査の結果についても進路選択のための支援に関する統括表を作成して、適切な支援内容および支援の分類についても検討を進めていく。これらは施設退所後のアフターケアの充実にもつながると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は概ね予定通り進んでいるが、面接調査を実施した際、謝礼なしでの調査協力者が予想より多かったことと、面接調査の音源起こしの委託費用が予定より安価であったため、次年度使用額が生じた。 次年度における使用計画は、平成30年度においても面接調査を進めていく予定のため、面接調査協力者への謝礼および音源起こしの業務委託費用として使用予定である。
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