研究課題/領域番号 |
16K13453
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研究機関 | 中部学院大学短期大学部 |
研究代表者 |
吉川 杉生 中部学院大学短期大学部, 社会福祉学科, 教授 (10331597)
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研究分担者 |
中川 雅人 中部学院大学, 経営学部, 准教授 (10352832)
真野 啓子 中部学院大学短期大学部, その他部局等, 教授 (60512548)
高野 晃伸 中部学院大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (60512879)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自助具作成 / 3Dプリンタ / 介護福祉施設 / 個別ニーズ / アセスメント / ヒアリング調査 |
研究実績の概要 |
本研究は、3Dプリンタ等のデジタル工作技術を介護分野での「自助具(障害を補う生活用具)と介助用具(以下、自助具等という)作成」に活用できる介護専門職の養成を目指し、そのための教育プログラムを開発することを目的としている。平成28年度においては、3Dプリンタを活用した自助具等作成に関するヒアリング調査と質問紙調査を以下の通り実施した。 ①ヒアリング調査(2016年8月~10月、12月~3月)については、岐阜県内の高齢者及び障害者施設の職員を対象に3Dプリンタ等による自助具作成のデモンストレーションを実施した上で、自助具等作成に関する半構造化面接によるヒアリングを2期に分けて実施した。 ②質問紙調査(2016年9月~10月)については、岐阜県内の高齢者施設(介護老人福祉施設169箇所、介護老人保健施設79箇所)、及び障害者支援施設(40箇所)施設を対象に、自助具等の使用状況やニーズ、活用上の課題等に関する質問紙調査を実施した。 ①のヒアリング調査においては、介護福祉施設における自助具の使用状況や課題、またニーズなどの意見を抽出することができた。さらに、施設種別に見た特徴では、介護老人福祉施設では「用具購入前の利用(試用・評価)への活用」、介護老人保健施設では「在宅復帰を可能にする用具の作成」、障害者支援施設では「個人に特化した用具の作成」についてのニーズが見出された。 ②の質問紙調査では、日常的な自助具等の活用状況や導入に向けた工夫や課題と、3Dプリンタ導入に関する意識を把握することができた。特に、介護福祉施設では自助具活用に当たって個々の利用者に応じた調整・工夫の必要性があり、3Dプリンタ等の活用は、物品を安価に作成するだけでなく、利用者の状態に対するアセスメントや製品の調整などに効果的に活用できる可能性があることが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、初年度(平成28年度)の活動目的を介護福祉現場における自助具活用状況と課題の把握に置き、ヒアリング調査と質問紙調査をもとに3Dプリンタ活用に関する考察を深めることに取り組んだ。 その中で、施設種別によって自助具活用の実態や、導入や導入後の工夫などについて共通する課題や個別の特性を見出すことができた。特に、ヒアリング調査では、3Dプリンタによる作成デモンストレーションをもとに、自助具作成に関する具体的要望を探ることで、要望に応えるために必要な機器の仕様や制作技術について、具体的な情報と経験を得ることができた。 これらを踏まえたことにより、質問紙調査では自助具等の活用状況を具体的に明らかにするが可能となった。特に、3Dプリンタを自助具等の作成に活用する視点での介護福祉施設への調査はほとんど皆無であり、先駆的な意義をもつ成果がほぼ計画に沿った形で得られたと考えている。 その上で、研究ではこの2つの調査を踏まえて、3Dプリンタ等の機器やソフトウェア、素材等の仕様を見極めていくこととした。そのため、それらの購入については段階的に進める必要が生じたため、この点では次年度に執行を繰り越すこととなった。一方、本研究は3Dプリンタに代表されるデジタル工作技術を活用できる人材養成を目指している。今回のヒアリング調査では、その一部に学生を参加させ、参加後にアンケートや聞き取りを実施し、これらの活動への関心や意見の聴取に当たることが出来た。 それらを踏まえて、研究活動は研究計画に沿っておおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度以降は、介護福祉施設の協力の下で3Dプリンタを用いた自助具等の具体的な製作を進めるとともに、これら工作技術を自助具等の作成に活用できる人材の教育プログラムを介護教育の中に取り入れるための基礎づくりを行う。 このうち、自助具作成については、介護福祉施設の利用者や家族の承諾を得て、アセスメント・設計・製作・評価・修正のPDCAサイクルを繰り返しながら、個別のニーズに応じた自助具を具体的な形にしていくことが必要となる。そのため、今後の研究に向けては、今回のヒアリング調査協力施設や、質問紙調査で協力の諾否について意思表示のあった施設から協力施設を選定し、施設側に担当者を置いていただいた上で、協力・推進をすすめる体制整備を図る。また、その過程で生じる新たなニーズに合わせて、必要機器等の補充や素材の調達などを進めていく計画である。 一方、教育プログラム作成については、平成28年度のヒアリング調査や今後の施設での製作過程を通して得た知見に基づいて教育方法を検討し、教育計画と教材づくりをすすめる。また、教育プログラムは、介護福祉士養成校学生と現場職員との2つのプログラムづくりに取り組む。このうち、養成校におけるプログラムについては、研究者所属校の学生を対象として活動が円滑に進められるよう、準備態勢を構築する。現場職員の教育プログラムについては、自助具等作成の協力施設と連携して具体的な準備を進めることが出来る調整・準備をすすめる。 なお、平成28年度の研究分担者の1名(真野啓子)が個人事情による退職し応募資格を喪失した。同研究分担者は、研究全体の中で自助具を利用する要介護者のニーズ把握や製作物の医療的な評価を担ってきた。当該研究者は、今後とも研究協力者として分担部分について協力するとの確約が取れており、今後とも予定通りの研究活動を進めることができると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費支出について、本研究における3Dプリンタ及び関連機器、使用素材等の購入は、ヒアリング調査等で把握した現場ニーズに応じた仕様を検討しながら購入した。また、平成29年度以降の介護福祉施設での製作協力でも、同様に現場ニーズに応じた機器・素材購入が必要となることが見込まれるため、当初平成28年度に予定したこれらの支出を翌年度に行うこととした。また、旅費支出については、ヒアリング調査において近隣施設での複数回の訪問を中心に、基礎的ニーズの把握を優先して進めたことや、成果発表を行った学会開催地が研究者の拠点地域と近かったこともあり、旅費支出全体の執行が減額執行となった。 その他の支出では、質問紙調査の実施に当たり郵送調査では郵送に加えてWEB回収を併用した。このため、回収後のデータ処理の効率化が可能となり、外部に委託せず内部での作業でデータ解析を進めたため、費用全体を圧縮することにつながった。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費については、上記の通り平成29年度に現場ニースに応じた仕様で機器、ソフトウェア、素材等の購入に充てる予定である。旅費支出については、現場と協力した製作活動(事例検討)や、人材養成の教育プログラム聴取等における施設訪問等で、県内遠隔地への複数回の活動への使用を予定している。その他の支出については、教育プログラム作成の教材印刷費、補充調査の郵送費等に充てる予定である。
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