研究実績の概要 |
最終年度は、532名(F = 275, M = 258)の障害者を対象に大規模なweb調査を実施した。調査内容は、社会適応度や幸福感、精神的健康、自尊心、相対している社会的障壁、自分の住んでいる地域の都市度、自身や周囲の人々の対人関係の流動性など多岐に渡るものであった。障害の内訳は、最も多かったものが精神障害で約42%、次に肢体不自由で約17%、疾病等を理由とする障害(内部障害等を含む)が約13%、発達障害・視覚障害・聴覚障害がそれぞれ約8%であり、重複障害が約1.5%、知的障害が約1%、であった。自身の障害が初対面の他者から見てすぐにわかるものではないと回答した者は約81%にのぼり、障害者のインペアメントの多くは見た目上わからないことが示されている。人生満足感、幸福感、対人関係満足感、自尊心など多くの指標で一貫して重複障害や精神障害、発達障害者が低く、視覚障害者や聴覚障害者は、相対的に高い傾向にあった。特に精神障害者の社会適応度が低いことが顕著に示された。全ての障害種において自分の住んでいるコミュニティにおける周囲の人々の対人関係形成機会に対する認識は、自身の対人関係形成機会よりも高いことが示され、障害者は自分には人々よりも対人関係ネットワークを作る機会が少ないと認識をしていることが示された。また、都市度によって障害者が相対している社会的障壁が異なるか確認したところ、農村部の肢体不自由者が金銭的に苦労していると記述しており、田舎における肢体不自由者の雇用機会や雇用条件の悪さを示唆する結果が示された。都市度や障害の種別に関係なく、多くの障害者が生活上目的とする場所までの移動における困難を示していた。この調査により、予測通り、障害種別によって様々な違いが示された一方で、障害種別を越えて一貫してみられる傾向も示された。
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