研究実績の概要 |
子ども(特に乳児)に話しかけるときの話し方は,声が高くなり,抑揚が大げさになるなど,独特なものになりがちであることが知られている(対乳児発話)。このような特徴に加えて,日本語では乳児に,犬のことをワンワンと呼ぶというように、大人どうし,あるいは,より年長の子どもに対しては決して使わない特別な語彙(育児語)を使って話しかけるといったことも見られる。育児語は、音の繰り返しや特殊音節の使用など独特の音韻形式を持ち、乳児の単語聴取を助けるとの指摘がある一方、大人は使わない語彙を発達の過程でいったん子どもに覚えさせることは無駄だとの声もある。本研究では、①子どもの発達にともない大人の育児語使用はどのように変化するのか、②育児語の使用は子どもの言語発達のどの段階にどのような影響を及ぼしているのか、を明らかにし、上の論争に対し、エビデンスに基づく答えを呈示することをめざしている。 H28年度は,①について明らかにするために,6, 9, 12, 15, 18か月のこどもを持つ養育者を対象として、育児語使用の横断調査を実施し,子どもの月齢と育児語使用の関係について検討してきた。この横断調査の途中の経過については,H29年3月の発達心理学会で発表した。さらに,横断調査で見出された発達的変化が,縦断調査でも確認されるか,また,育児語使用の月齢変化が子どもの語彙発達とどのような関連があるか,検討するために,横断調査に参加した養育者から,定期的に継続して育児語使用状況や子どもの語彙発達などについてデータを収集している。
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