アヴェロンの野生児についてはこれまでイタールの報告だけをもとに考察や議論がなされてきたが、本研究で明らかにしたように、この事例にはイタールだけでなく、当時のフランス内務省や人間観察家協会が決定的に重要な関わり方をしていた。これは「アヴェロンの野生児」という歴史的出来事の既存の見方の見直しを迫るものである。また、この野生児がどのような障害をもっていたかについてはさまざまな見解があり決着がついていなかったが、本研究では、残されている報告や診断を精査・比較した結果、少年が自閉症であった可能性が濃厚であることが示唆された。
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