研究課題/領域番号 |
16K13471
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
板倉 昭二 京都大学, 文学研究科, 教授 (50211735)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 知覚狭小化 / 乳児 |
研究実績の概要 |
経験は、知覚システムの発達に大きな影響を与える。発達初期には、知覚情報の弁別は、広くチューニングされているが、経験とともに選択的に狭小化されることがわかっている。これを知覚狭小化(perceptual narrowing)といい、初期知覚発達の重要な特徴である。この現象は、顔の知覚や言語の知覚の発達においてよく知られている。本研究課題では、1)このような知覚狭小化が領域に関わらず、共通なものであるか(領域一般性:domain general)、または、領域に固有なものであるか(領域固有:domain specific)を実験的に検証すること、また、2)知覚狭小化の可塑性を、幼児、児童、成人を対象に検討することを主要な目的とする。すなわち、狭小化が生じたと思われる刺激を暴露することによって、可塑化が見られるか否かを検討する。 本年度は、これまで取りためていた、乳児における知覚狭小化のデータをまとめた。ことなる領域における狭小化が、相互に関係するのか否かを、被験者間デザイン(N=72)を用いて、自人種の顔と他人種の顔の弁別、および、母語と非母語の弁別が可能かどうかを調べた。対象となったのは、3カ月児、6カ月児、9カ月児、そして12カ月児であった。その結果、3カ月児は、自人種顔と他人種顔の弁別および母語と非母語の弁別ができたが、6,9,12カ月児ではその限りではなかった。また、12カ月児おいてのみ、2つの領域の正の相関がみられた。このことから、2つの領域の関係は、12カ月齢までに変化するらしいことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進捗状況は、1)の知覚狭小化の領域固有性、領域一般性の検討に関しては、これまで取ためていたデータにさらにデータを加えて、分析を行い、英語論文にまとめて国際学術雑誌に投稿したので、極めて順調であるといえる。しかしながら、2)のトレーニング実験を開始することができなかったため、「やや遅れている」と結論した。 しかしながら、1)の解析を十分に行い、いわゆる権威ある発達の国際学術雑誌に投稿できたことに関しては、予想以上の成果である。
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今後の研究の推進方策 |
介入実験(トレーニング実験)では、家庭において、特殊な音楽リズム等に暴露することを計画しており、今年度は十分にその参加者を確保できなかったが、本研究室に登録している研究協力者から、候補者の選定を行い、実験を自資する予定である。また、刺激等も作成済みであるので、実現可能な段階にあると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、幼児、児童、成人を対象に、狭小化が起こってしまった刺激に一定期間暴露することによって、再び、その刺激を処理できるようになるか否かを検討する予定であったが、この訓練は自宅で行ってもらうため、協力者探しが難航した。そのため、当該年度での実施が困難となり、次年度に持ち越された。そのために、研究協力者への謝礼金、実験補助者への謝金等の使用がなくなり、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度に困難であった、協力者もほぼ確保でき、実験の実施が実現可能となった。そのため、研究協力者謝礼金および実験補助者の謝金と使用する予定である。また、音楽リズムを刺激として用いる予定であるが、刺激作成ソフトも購入する計画である。この刺激作成は、外注も考慮している。
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