研究課題
経験は、知覚システムの発達に大きな影響を与える。発達初期には、知覚情報の弁別は、広くチューニングされているが、経験とともに選択的に狭小化されることがわかっている。これを知覚狭小化といい、初期知覚発達の重要な特徴である。この現象は、顔の知覚や言語の知覚の発達においてよく知られている。本研究課題では、1)このような知覚狭小化が領域に関わらず、共通なものであるか(領域一般性domain general)、または、領域に固有なものであるか(領域固有:domain specific)を実験的に検証すること、また、2)知覚狭小化の可塑性を、幼児、児童、成人を対象に検討することを主要な目的とする。異なる領域における狭小化が、相互に関係するのか否かを、被験者間デザイン(N=72)を用いて、自人種の顔と他人種の顔の弁別、および、母語と非母語の弁別が可能かどうかを調べた。対象となったのは、3カ月児、6カ月児、9ヵ月児、そして12カ月児であったその結果、3カ月児は、自人種顔と他人種顔の弁別および母語と非母語の弁別ができたが、6,9,12カ月児ではその限りではなかった。2つの領域の関係は、12カ月齢までに変化するらしいことが示された。本結果は、国際学術誌のJournal of Experimental Child Psychologyに採択された。また、乳児、成人、サルのフィールドワーカーを対象として、6ヵ月児、12ヵ月児、霊長類研究者、その他の成人を対象に、ヒトとサルの顔識別テストを行った。その結果、顔識別能力は、生後1年間で経験により精緻化されていくが、成人であっても経験により異種動物の顔認識能力の向上が見られることがわかった。本研究は、2018年の日本心理学会で優秀発表賞を受賞した。
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Journal of Experimental Child Psychology
巻: 176 ページ: 13-127
https://doi.org/10.1016/j.jecp.2018.06.007