研究課題/領域番号 |
16K13473
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研究機関 | 北翔大学 |
研究代表者 |
瀧澤 聡 北翔大学, 生涯スポーツ学部, 准教授 (50438058)
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研究分担者 |
伊藤 正勝 北翔大学, 教育文化学部, 教授 (10733701)
石塚 誠之 北翔大学, 教育文化学部, 講師 (90726118)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 発達障害 / 身体緊張 / 身体緊張緩和法 / 発達障害通級指導教室 |
研究実績の概要 |
医療や教育等の場でよく観察される発達障がい児の身体緊張及びその対応に関する実証的研究報告はみられない。そこで我々は,発達障がい児が,身体緊張の状態に気づき,それを自身で制御できる方法を開発することとした。H28年度は,北海道内のA市立B小学校発達障害通級指導教室に通う児童16名(男子15名,女子1名),平均年齢が9.43(SD=1.03)を対象にし, 日常の学習場面(PC作業・簡易な粗大運動の前後)での身体緊張緩和法の有用性について検討した。実施期間は,2016年12月から2017年3月で,検査の平均所要時間は,1ケースにつき40分程度であった。検査場所は,通級指導教室の1室を使用した。検査内容と手続きは,筋硬度計で両肩の筋の状態,パルスアナライザープラスビューで自立神経活動,唾液アミラーゼモニターで生理的ストレス反応,小学生用ストレス反応尺度で心理的ストレス反応をそれぞれ測定した。日常の学習場面前後(1回目群と2回目群)及び身体緊張緩和法として両腕の伸展や脱力等を支援するためのストレッチ活動を採用しその実施後(3回目群)の身体緊張の状態を測定した。いずれの結果からも群間の有意差(p<0.05)がみられなかったが,小学生用ストレス尺度については,1回目群と3回目群に有意傾向(p<.1)がみられた。検査結果の全体的傾向として, 各測定値が1回目群よりも2回目群、2回目群よりも3回目群が減少する傾向にあった。身体緊張緩和法の効果をある程度示す結果になったと考えられた。身体緊張緩和法の意義は,日常の学校現場で,教員と発達障がい等のある児童が容易に獲得でき,何度でも活用できるスキルの開発を目指してことである。なお,研究成果の一部について,「発達障がい等のある児童への身体緊張緩和法に関する有用性の検討」と題して,今年10月の日本LD学会にてポスター発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H28年度中に, 研究実績の概要で述べた発達障がい児を対象にした同様の検査内容と手続きで,定型発達児に関しても検査実施予定であった。しかし,諸事情で研究協力可能なA市立学校等を探し出すことが困難となり,最終的にA市教育委員会の協力を得て,現在市内のスポーツ少年団に研究協力を打診しているところである。本研究の進捗状況は,当初の計画より数か月ほど遅れていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度においては,定型発達児を対象にした身体緊張の状態の把握と身体緊張緩和法の有用性について検討していく。これにより発達障がい児と定型発達児間における身体緊張緩和法の効果に関する比較検討が可能となる。さらに,発達障害児の身体緊張の解消を目的とした『身体緊張緩和法』を児童の特性に応じ学校場面や生活場面で実践できる形に改編した『簡易ストレッチ法』として提案し,身体緊張を自己管理するために必要な手続きについて明らかにする。対象者は,『簡易ストレッチ法』を活用することを希望する発達障害児 10 名程度とし,身体緊張を自己管理する『簡易ストレッチ法』を実施することでの効果を検証する。参加条件はH28年度と同様とする。その実践については,学校場面・生活場面として,学校場面では教師により実施を行う。また,生活場面での実践回数とその効果については,実践チェックシートを作成・活用し,実施前後の身体緊張の様相とストレス・実施による効果について記録から分析する。その際の評価については,事前に個別にプログラムを作成する。なお、身体緊張の実態把握の方法として,簡易な筋電計を購入し,筋の状態の計測を実施する予定でいる。筋硬度計に加えて筋電計を採用することで,より詳細なデータを入手したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
発達障がい児の身体緊張に関する多面的実態把握のため,当初設定した指標の他に,生理学的指標として筋電計が必要と考えた。なぜなら慢性的な筋状態を把握するためには,筋硬度計とさらに筋電計を使用することで,より彼らの実態が解明可能になると思われたためである。H28年度の予算を若干修正し筋電計を購入することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
今年6月まで簡易な筋電計を購入し,7月には発達障がいのある児童を対象にして測定する。そして「簡易ストレッチング」の開発のため,これまで使用した機器と筋電計を併せて,発達障がいのある児童を対象にし,多面的な指標による実測を8月には実施する。同時に通年のスパンで道内の通級指導教室教員の協力を得て,「簡易ストレッチング」を継承してもらい,その効果についての検証に取り組む。
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