研究課題/領域番号 |
16K13474
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
竹尾 和子 東京理科大学, 理学部第一部教養学科, 准教授 (30366421)
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研究分担者 |
神野 潔 東京理科大学, 理学部第一部教養学科, 准教授 (40409272)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | PTA / 学術研究 / 学際研究 / 教育心理学 / 法史学 / 沖縄 |
研究実績の概要 |
本研究プロジェクトは、PTAを教育心理学と法史学の共同研究により、学術的、多角的に明らかにすることを目指してきた。教育心理学と法史学の各領域における、今年度の研究実績の概要は以下の通りである。 教育心理学:(1)2017年度までに行った沖縄をフィールドとするPTA調査研究の分析と論文化を行った。主に、役員選出方法やその背景としての人間関係や共同体のあり方に焦点をあてて分析し、「地域社会システムの一部としてのPTA」という理論的枠組みを提唱した(竹尾,2019)。(2)PTAを教育心理学的に明らかにするための前提として、「PTAとはそもそも何なのか?」という問いをたて、①PTAの規模、②PTAの成立の背景、③PTAの社会的位置(社会教育関連団体としてのPTA)と法的根拠、④PTAのジェンダー格差、⑤PTAの今日的問題(強制的な加入・役割分担・活動内容)、⑥PTA改革の方向と可能性の7つの視点からPTAを輪郭を整理した(竹尾,印刷中)。以上の(1)(2)により明確にされたPTAの教育心理学研究の範疇とその意味、および、モデルや方法に基づく研究を今後行っていく。 法史学:2017年度まで行ってきたPTAに関する歴史的研究を、2018年度も継続した。1950年代~80年代にかけての沖縄のPTAについて、また同時期のその他地域(東京、神奈川、長野、石川、岐阜、広島、福岡など)のPTAについて、史料蒐集を行った。史料の中心は、各地のPTA協議会が刊行した新聞・広報誌や、研究大会での資料などである。集めた史料をもとに、地域比較の視点を重視した戦後PTA史研究を今後行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、開始当初、国内外でのPTA調査を予定していたが、2017年度に実施した沖縄でのフィールド調査での発見とそれによって見込まれる成果が、予想以上に大きいと判断されたため、沖縄調査の継続という方向での調査計画の変更を行った。それに伴い、沖縄調査結果の分析や公表などの時間も更に要することとなった。 この調査スケジュールに変更により、PTAの地域・社会・文化的文脈からの解明の基礎となるモデルを構築するなど、大きな成果もあった。 一方で、この変更により、当初予定していた、沖縄以外の国内外のPTA調査を縮小せざるをえなくなったことも事実である。しかし、沖縄調査の成果の地域・文化的特殊性と一般性を特定するために、沖縄以外の調査を行うことは必要であり、それは次年度の課題なっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究(教育心理学研究・法史学研究)の推進方策は以下の通りである。 (1)教育心理学研究:①沖縄フィールド調査結果の更なる分析と総括:5校の単位PTAでのインタビュー結果の個別の分析と同時に、これらの包括的分析を進める。②PTAの教育心理学研究モデル(「地域社会システムの一部としてのPTA」)の精緻化:①と②を往還し、モデルの精緻化とモデルに基づく包括的分析を進める。③PTAの文化的特殊性と一般性の解明:①②の成果の文化的特殊性と一般性を国内比較や国外比較および海外の研究者との議論を通して解明する。④PTA教育心理学研究の包括。 (2)法史学研究:(2)法史学研究:①いわゆる本土復帰以前の沖縄における、PTAの活動の実態を明らかにする。2017年に日本教育心理学会で行った報告の継続的研究である。②いわゆる本土復帰以後(特に1980年代)の沖縄における、PTAの活動の実態を明らかにする。①・②とも、当該時期における沖縄の状況と結び付けながら、PTAの果たした社会的役割、他地域のPTAと比較した場合の特殊性について検討するものである。③いくつかの地域を選出して、同時期におけるPTAの活動の比較研究を行う。 (3)PTAの学術的・学際的研究の包括:(1)(2)の各総括を踏まえ、教育心理学と法史学による学術的・学際的研究の成果を包括する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、開始当初、国内外でのPTA調査を予定していたが、2017年度に実施した沖縄でのフィールド調査での発見とそれによって見込まれる成果が、予想以上に大きいと判断されたため、沖縄調査の継続という方向での調査計画の変更を行った。それに伴い、沖縄調査結果の分析や公表などの時間も更に要することとなった。これにより、PTAの地域・社会・文化的文脈からの解明の基礎となるモデルを構築など、大きな成果が得られた。 一方で、この変更により、当初予定していた、沖縄以外の国内外のPTA調査まで実施することができなくなり、次年度に、沖縄調査の成果の地域・文化的特殊性と一般性を特定するための沖縄以外の調査を行うことになった。
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