本研究プロジェクトは、PTAを教育心理学と法史学の共同研究により、学術的、多角的に明らかにすることを目指してきた。今年度の研究実績の概要は以下の通りである。 (1)2018年度に大学生を対象に実施したPTAに関する質問紙調査の結果を分析し、高校生までの児童・生徒としてのPTA体現者にとってのPTAの経験や記憶の中身を明らかにし、そこから、PTAの子どもにとって意義を検討した。 (2)2018年度に引き続き、PTAの輪郭を明らかにするために、①PTAの日本における発祥と展開、②社会制度におけるPTAの位置づけ、③メディアやネット等を中心に展開されているPTA議論の内容(加入問題・役員選出方法・活動内容の煩雑さなど)、④PTAにおける性別分業、⑤PTAの新しい形と実践について、文献や調査による研究を行った。特に①については、刊行されている各都道府県のPTA10年史・20年史・30年史を収集して各地のPTAの展開過程を概括的に把握しかつ比較するとともに、PTA新聞などの史料を収集・閲覧して、歴史学的な観点からの理解を深めた。また、前年まで行なっていた沖縄におけるPTAの歴史研究を継続した。また、②については、その位置づけをめぐる戦後の議論を追いかけ、特に著名な経済学者・社会思想家・教育者である森戸辰男のPTA論について思想史的に考察した。 (3)近年のPTA議論はメディアやインターネットを中心に広がっていることを踏まえて、メディアにおけるPTAの議論を概観するため、過去30年間の新聞(全国紙、ブロック紙)におけるPTAに関する記事を収集し、現在、分析途中にある。また、近年の国内および個々の単位PTAにおけるPTA議論について、「差の文化心理学」の観点から分析し、これからのPTAのあり方について考察した。
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