本研究の目的は、一般のPC検索エンジンを利用した情報検索に未習熟な大学生を対象に、学術目的を前提にした検索教育方法の提案と育成過程の検証である。教育方法の基本は、検索作業の中で効果的に要点を学習させる点にある。この目的の下、昨年度は情報検索過程全般のうち検索結果一覧を得てからの閲覧行動に観察対象を絞り、サイト属性(運営主体やサイトの目的)や掲載内容の予測・検証を促す逐次的教示の効果を確かめた。遂次的提示とは、実際にページを閲覧する前後に質問形式を交えて行う提示方法であり、その効果は、模擬閲覧時の作業時間や事後テスト(閲覧サイトの予測や再認等)結果等から検証した。また、検索課題や教示のタイミング等の加工の自由度が高い実験用アプリケーション編集システムを開発した。 本年度は昨年度の結果を踏まえ、新たに編集したアプリケーションを用い、逐次的教示が閲覧行動に与える効果の詳しい検討に目的を絞り、異なる実験条件を設定して検証を行った。一つは、教示を提示した課題の後に行う、閲覧態度・行動の変化を観察する模擬閲覧課題の内容を変え、昨年度の実験と比較することであった。具体的には、閲覧目的を特定の情報探しとし、教示提示方法により閲覧行動の傾向に違いがみられるか否かを検討した。もう一つは、遂次提示を適用する対象者の範囲を検討するため、未習熟者より情報検索能力が高いと期待できる集団に対して同種の実験を行い、逐次的な教示提示が与える影響が集団により異なるか否かを検討した。また、昨年度の実験結果の再分析も行った。その結果、模擬閲覧課題の検索テーマによっては、単純な学習転移は期待できないとわかった。また、学術目的の検索であっても馴染みのない検索テーマの場合、一般大学生は、情報発信者が不明確な二次情報で構成されると認識していても、まとめサイト、Q&Aサイトといったサイトを重用する根強い傾向が伺えた。
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