研究課題/領域番号 |
16K13478
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
成田 健一 関西学院大学, 文学部, 教授 (10228091)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生涯発達心理学 / 自己 / 中年期 / 老年期 / 質問紙調査 / 超短縮版 / 精神的健康 / 繰り返し測定 |
研究実績の概要 |
本研究は,大きく2つの目的を持つ研究である。第一の目的は,成人期(青年期・中年期・老年期)における自己の発達とwell-being並びに個人差変数の関係を,包括的に測定可能なショートスケール(超短縮版尺度)を用いて,横断的に検討することである。そして第二の目的は,これらの検討課題に関して,長期縦断的に研究することを可能にさせる礎となる調査データとして,様々な変数を収集することである。後者の目的はデータ収集にあたって,将来的なデータ利用の可能性を留保しつつ,調査を行うことを意味する。しかしながら,本研究において長期縦断的調査を実際に行う訳ではない。 さて平成28年度においては,第一の目的のうちの一部として,青年期(大学生)のデータ収集を当初予定していた。ただし後述のとおり,青年期データについては,本研究とは別の研究によって,代用することが可能となった。このため平成28年度は平成29年度以降に行う予定である,中年期・老年期のデータ収集に向けて質問票の検討を入念に行った。質問票の検討においては,自己やwell-beingに代表される諸変数に関して,内外で発表されている様々な尺度の中で,本研究の目的に合致するショートスケールについて探索した。それに加えて,第二の目的に関連した研究として,縦断研究を行う際の技術的側面や理論的側面について検討を行った。特に縦断研究において,必須となる繰り返し測定という問題について,重点的に検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究費を利用して調査を行い,データを収集する予定であった青年期のデータについて,別の研究で実施した調査のデータを用いることが可能となった。この点,本研究にとっては大いに利点となり,研究の進捗を前に進めるものであった。 そこで次に中年期・老年期のデータ収集に焦点を当てて,検討を行った。中年期・老年期の質問紙調査は多くなされているものの,心理学的研究の中で,超短縮版とも言われるショートスケールを利用したものは決して多くなく,むしろ極めて例外的とも言える。中年期・老年期の人々に対して,ショートスケール版の心理尺度を適用した場合,その信頼性・妥当性が確保されていないため,利用が少ないのであろう。加えて本研究では,縦断研究を視野に入れるため,繰り返し測定に耐え得る尺度であり,かつ十分な信頼性・妥当性が確保された心理尺度の探索に腐心することとなった。この作業は非常に困難であった。内外の様々な諸研究をあたり,本研究の目的に合致したショートスケールを探索することに大変な時間とエネルギーを要することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度も中年期・老年期の人々に対して,縦断的に適用可能なショートスケールを探索作業を進めている。またそれらをどのような形で組み合わせることで,本研究の目的である自己の発達とwell-being並びに個人差変数の関係を横断的に検討することが可能となるのか,予備調査なども含め,探索的な検討が必要であると考えている。加えて理論的な枠組み並びに方法論的な観点から縦断研究に伴なう繰り返し測定の問題などについても,引き続き検討が必要であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述のとおり,本年度収集する予定であった青年期(大学生)の調査データに関して,別の研究で収集した調査データを利用することが可能となった。結果として,本年度の研究費のうち,データ収集に要する様々な費用を執行する必要性がなくなったため,未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は,中年期・老年期のデータ収集の予備的検討を実施する予定である。前述のとおり,心理学的研究分野において本研究実施に耐え得る利用可能な心理尺度がほとんど見られない。データ収集を実施する上で,まず本研究の目的に合致したショートスケールの利用可能性を見極める必要性がある。このため,まずは文献などに基づく情報収集等と予備的検討に必要な費用に充てることとする。
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