本研究は,大別して2つの目的を持ち実施された。まず第一の目的は,成人期(青年期・中年期・老年期)における自己の発達とwell-being並びに個人差変数の関係について,心理的構成概念を簡便に測定することができるショートスケール(超短縮版尺度)を用いて,横断的に検討することであった。 次に第二の目的は,上記第一の目的にある検討課題について,将来的な長期縦断研究を可能にさせる礎となる調査データとして機能させることであった。この第二の目的については,本研究のみにて完了するものでは無論ない。実際,本研究の範囲では,言うまでもなく長期縦断研究を行うことができない。このため,長期縦断研究は後の研究に託すこととならざるを得ない。ただし,この第二の目的を念頭において本研究を進め,データ収集を行なう際には,将来的な長期縦断データ利用の可能性を留保することを忘れてはならない。 さて今年度においては,本研究を進めるにあたって,最重要である中年期・老年期のデータ収集に向けて,質問紙(調査票)作成を試みた。本研究の目的に合致するショートスケール(超短縮版尺度)の中で適切な尺度を峻別することが極めて困難であるため,昨年度,一昨年度と同様,想定よりも多くの時間が必要であった。最終的に2020年に調査を行なう環境が整い,実施する段階に至った。 そこで今般のコロナ禍となってしまった。社会・環境的な要因の影響を本研究からは当然排除すべきである。このため当初,しばらく調査実施を見合わせた。しかし状況は好転せず,痛恨の極みであるが,通常の郵送調査実施が不可能となった。このため予備調査および統制調査と位置づけたweb調査のみを実施し,中年期・老年期の実証データの一部を得るに留まってしまった。残念ではあるが,予備的な調査であるこのweb調査を,将来の縦断研究の礎として機能する可能性を留保させたい,と考えている。
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