研究課題/領域番号 |
16K13479
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研究機関 | 鶴見大学短期大学部 |
研究代表者 |
斎藤 晃 鶴見大学短期大学部, 保育科, 准教授 (10225691)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アタッチメント内的表象 / アタッチメント連続性 / DNA多型・メチル化 |
研究実績の概要 |
【研究目的】乳児が母親を代表とする人間に対して形成する心の絆をアタッチメント(愛着)と呼び,成人が自分自身に対して抱くイメージを「内的表象」(Internal Working Model, IWM)と呼ぶ。母親の抱くIWMがその子どものアタッチメントとIWMの形成に影響を与えると考えられ,連続性の視点から多数の研究が行われてきた。また最近では,DNA多型がアタッチメント形成に影響を与えるという研究と与えないという研究が存在し,結論はまだ出ていない。そこで,本研究では成人期に達した協力者とその母親を対象として,DNA多型・メチル化がアタッチメント・IWM形成に与える影響,そして母子間のアタッチメント連続性に与える影響を検討する。さらに成人期IWMとDNA多型・メチル化,心拍・脳波データとの関連性をも検討する。尚,DNA多型とはDNAのある特定部分の反復回数のことで,DNAメチル化とは特定のシトシンにメチル基が付く結果,遺伝子発現が抑制されることである。 【研究実績の概要】研究協力者40名に対して研究の説明後に同意書を得て,IWMに関するアンケート調査,心拍・脳波測定,DNA解析のための唾液採取にご協力いただいた。内1名は時間不足のため,心拍・脳波測定を辞退された。協力者には英数字8ケタの符号を付し,連結可能匿名化した対応表は個人情報管理者が管理中である。 数種類の自己記入方式によるIWM質問紙で構成されたアンケートを作成し,得られたデータは研究代表者以外の第3者がパソコンに入力済みである。唾液から抽出したDNAに対して濃度測定(Qubit)と純度測定(NanoDrop)を行った結果,いずれも基準値以上であった。平成29年度上半期にDNA多型・メチル化,及び心拍・脳波データの解析を終了する予定である。 個人情報の管理を徹底し,かつ研究施行上の倫理的問題は発生していない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初,協力者のアタッチメント内的表象(IWM)を成人アタッチメント面接(Adult Attachment Interview, AAI)にて得る予定であった。しかし詳細な検討の結果,日本文化圏において成人した協力者に対して米国にて開発されたAAIを忠実に施行すると,心理的侵襲が発生する可能性が存在することが判明した。そこで,我が国の先行研究にて開発された数種類の自己記入方式による質問紙を組み合わせてIWMを測定することに変更したため,質問紙の選定に時間を要した。 また,研究協力者は全員が成人し,その多くが社会人であり,業務の間に大学に来校していただいたので,全員のデータ取得完了に時間を要した。 上記2点の要因により,進捗状況はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度上半期において心拍・脳波データの分析,及びDNA解析を終了し,IWM,心拍・脳波データとDNA多型・メチル化との関連性を検討する。そして子どもと母親のIWMの世代間伝達に関して検討すると同時に,DNA多型・メチル化と世代間伝達との間の関連性に関して検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者は全員が成人し,その多くが社会人であり,業務の合間に大学に来校していただいた。そのため,DNA解析のための唾液採取が遅れ,平成28年度内でのDNA解析に至らなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
DNA解析に250万円を要する。次年度使用額と平成29年度助成金とを合わせて解析費用に充てる予定である。
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