(1)過剰適応とストレス関連特性が不適応に及ぼす影響の検討:過剰適応がバーンアウトや抑うつに及ぼす影響について,タイプA行動や防衛的悲観主義,完全主義といったストレス関連特性と比較した。過剰適応はストレス関連特性と関連し,0.185~0.403の説明分散であることがわかった。ストレス反応への影響を検討するため,階層的重回帰分析を行ったところ,ストレス関連特性の説明分散は大きいものの,過剰適応の説明分散の増分は0.004~0.023とかなり小さいことがわかった。 (2)自己愛と完全主義が過剰適応と抑うつに及ぼす影響の検討:過敏型自己愛が過剰適応の評価懸念と正の関連を示し,自己志向的完全主義が過剰適応の評価懸念と強迫性格と正の関連を示し,抑うつに間接的に影響していた。他者志向的完全主義は抑うつへ直接正の関連を示す経路と評価懸念を介して間接的に影響する経路があることがわかった。また。過剰適応の抑うつへの影響の程度は自己愛や完全主義と比べて小さいことがわかった。 (3)過剰適応が対処行動やストレス反応に及ぼす影響の検討:ストレス関連特性と過剰適応が対処行動の採用やストレス反応に及ぼす影響の程度を検討するために,階層的重回帰分析を行った。対処行動に対しては,ストレス関連特性の影響の割合が大きく,過剰適応の影響の程度は小さいことがわかった。ストレス反応や仕事満足に対しては,ストレス関連特性と対処行動の説明分散が大きく,過剰適応の説明分散は有意ではなかった。このことから,過剰適応が対処方略選択やストレス反応に及ぼす影響力は小さいと言える。 以上の結果から,複数の異なるストレス指標を用いても過剰適応の影響力は小さいことから,仕事ストレスにおいて,過剰適応はストレスを高める影響因(個人特性)ではなく,ストレスの結果生じた状態(反応)であると捉えることが妥当であると言える。
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