カウンセリング場面においてカウンセラーとクライエントの間の社会的交流をスムーズなものにすることは、カウンセリングの有効性を上げるために重要である。そのような社会的交流をスムーズにする技法の主要なものの一つに、他者の感情を理解し受容的な態度を示す、共感的態度がある。 本研究では、自然な社会的行動を遂行中の二者(ペア)の脳活動の同時計測が可能なdual-fMRIを活用して、20組の同性の初対面のペアを対象にした、自らの意見を開示する実験課題(意見開示課題)を実施した。意見開示課題においては、共感的態度の有効性を示すバイオマーカーの探索を目的とした。共感的態度の有効性の評価として、各々が感じる親密度(共感的態度を受けることで、相手に対する親密度をより感じる)を採用した。課題を通じて、右下前頭野と右側頭頭頂結合部の機能的結合性が増強することから前頭葉と他の領域の機能的結合性が共感的態度のバイオマーカーとなりうると考えた。 さらには、医療的な面談場面で共感的態度を呈することを求められる医療労働者(職業上の要請として有効な共感的態度を取ることが求められる)を対象に安静時fMRIを用いた実験的検討を実施した。年齢、性別を統制した対照群と比較して、右前頭極と線条体の結合性が低下することを確認した。これは職業的訓練に伴う有効な共感的態度のバイオマーカーと考えられる。以上のように、機能的結合性の評価を中心として、共感的態度の有効性に関するバイオマーカーを明らかにした。
|