研究課題/領域番号 |
16K13491
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
菅沼 憲治 聖徳大学, 心理・福祉学部, 教授 (10118713)
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研究分担者 |
吉澤 英里 環太平洋大学, 次世代教育学部, 講師 (80616029)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 心理学的介入 / 惨事ストレスケア / セルフ・コンパッション / レジリエンス / アサーション |
研究実績の概要 |
平成28年度は、消防職員のストレス免疫能力の実態を調査した。東京消防庁の職員に対して、セルフ・コンパッション尺度を用いたアンケートを実施した。さらに、東京消防庁のデブリーファー研修受講者を対象としたトレーニング(ロールプレイおよび教養養育)を実施し、トレーニング前後でのセルフ・コンパッションを測定した。この結果は平成28年度中に発表することが出来なかったため、次年度に発表をする予定である。平成28年は以下の内容について発表を行った。 1.消防職員のPTGについて:東日本大震災を経験することで、消防職員の人生観がどのように変化し、またその変化が職業意識にどのような影響を与えたのかについて調査した。「東日本大震災が起きる前と起きた後で人生観に変化は有りましたか(設問1)」と「変化があれば、消防職員の職業の何に影響を与えましたか(設問2)」の二つの設問を設けた。それぞれに対して自由記述形式で回答するように求めた。その結果、調査協力者の60%に人生観の変化が認められた。具体的な内容としては、消防官としての職責や使命に言及したものがある一方で、家族との関係について挙げたものもあった。消防職員のストレス免疫能力を考えるうえで、PTGについてさらに詳しくとらえる必要性があるだろう。 2.FBRについて:FBRを実施し、その前後でのアサーションを比較した。さらに、ロールプレイングを実際に行った者(主役・相手役)とそれを見ていた者(観察者)およびファシリテーター役との間でトレーニング効果に違いがあるのかを検証した。その結果、全体としてトレーニング後のアサーションが高まった。ただし、一部の下位尺度では、測定時期に関わらず主役・相手役の方が観察者よりも高いアサーションを示していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、消防職員のセルフ・コンパッションの現状を把握することができた。さらに、アサーション・トレーニングを行い、トレーニング前後でのセルフ・コンパッションを測定することができた。その一方で、当初予定していた、一般職員とデブリーファー(ピア・デブリーファーを含む)の比較ができなかった。この点については、平成29年度に実施し、当初の目的が達成できるようにしたい。現在は、複数回のトレーニングを実施しながら、各トレーニングの効果を比較する段階に入っている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の実施計画に従い、平成29年度は東京消防庁の職員を対象に、ストレス免疫訓練を実施し、「セルフ・コンパッション」、「レジリエンス」および「アサーション」を指標とした効果測定を実施する。1回あたりのトレーニングは1日(6時間)で完結するものを準備する。プログラムの内容は1-2の結果をふまえて選定する。どのプログラムが最も効果的かを確認するため、トレーニングはプログラムを変えながら年間を通して複数回実施する。各トレーニング間の効果を比較することで、最も効果的なプログラムの内容を構築していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
東京消防庁を対象とした調査の準備が整わなかった。アンケート項目の情報収集に時間がかかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度も研究成果を積極的に発表していく。そのために、学会参加費および旅費・交通費(2回)を計上する。さらに、雑誌に投稿する際の英文校閲謝金が必要である。加えて、研究分担者との打合せを東京で実施するため、交通費を計上する。また、研究を進めるうえでの資料整理補助者への謝金(1名×8日)や、ポスターならびに抜き刷りの印刷費、設備備品費(図書購入のため)、消耗品購入費をそれぞれ計上する。 上記の理由から、設備備品費約100,000円、消耗品購入費約150,000円、国内旅費約100,000円、人件費・謝金約100,000円、その他約100,000円を使用する。
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