本研究は、発達障害児の適応と学習を促す教育支援プログラムの開発と評価の検討を目的に行われた。ADHDやASDなどの発達障害がある児童は、学校場面において様々な困難感を有していることが多い。たとえば、授業内容を理解するだけの能力や学習スキルを有しているにも関わらず、「授業に集中できない」「自分が気になることに集中してしまう」などの学校適応に関する困難感があり、結果的に学習に支障をきたしてしまうことが多い。本研究では、発達障害児の適応と学習を支援するための鍵となる認知機能として「注意制御」と「メタ認知」の機能に着目し、それらの機能促進が適応や学習に及ぼす影響について検討した。 本研究の主要な取り組みの1つとしては、通級指導教室に通学する児童を対象に、注意制御を促進する課題を開発し、課題実施中における前頭前野背外側部(DLPFC;注意制御機能の責任部位)の脳血流をNIRSによって評価した研究があげられる。本研究における特徴的な結果は、継続的な注意制御訓練は発達障害児の注意制御機能を促進したことが課題成績とともに脳機能面からも把握できたことである。具体的には、支援開始時から支援8回目にかけて、課題成績が上昇しただけでなく、課題実施中のDLPFCが有意に上昇することが示された。また、注意制御機能が促進された児童においては、課題開始時における目標設定を高く設定する傾向が示された。本研究においては、注意制御機能を促す課題以外も実施されており、それらの課題においてポジティブなフィードバックが与えられていたことから、「注意制御能力」や「やり抜く力(Grit)」の理解(メタ認知)が促進されたことで、適応的な動機付けが涵養されたことも示唆された。
|