研究課題/領域番号 |
16K13499
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
山崎 修道 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 主席研究員 (10447401)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 精神病性疾患 / 重度精神疾患 / ウェルビーイング / リカバリー / コミュニティ |
研究実績の概要 |
精神病性疾患からの回復(recovery)には,地域生活の中で,当事者の主観的なウェルビーイングを高めることが不可欠である.当事者主導研究(User-led study)は,精神疾患を経験した当事者の主観的ウェルビーイング回復過程を明らかにする有力な方法だが,世界的にも少なく,我が国ではほぼ皆無である.本研究では,①精神病および重度精神疾患を経験した当事者を中心とした研究チームを組織し,②地域生活の中で当事者が主観的なウェルビーイングを回復する過程を,当事者主導の研究体制で明らかにしていくことである. 平成29年度は,①昨年度に立ち上げた当事者主導研究チームを継続し,フォーカスグループインタビューを順次実施する,②昨年度生成した仮説モデルを精緻化する,③回復過程モデルをシンポジウムで公表し,論文化を進める,以上の3点を進めた.①精神疾患当事者2名を含む当事者主導研究チームにより,フォーカスグループインタビュー及びディスカッションを計12回実施した.②その過程で,精神疾患当事者を含むチームでのディスカッションを通じて,仮説モデルの精緻化を進め,回復促進要因に着目したモデルおよび回復阻害要因に焦点を当てたプロセスモデルを作成した.③回復促進要因に着目したモデルについては,当事者研究シンポジウム(平成30年1月)にて発表した.回復阻害要因に着目したモデルについては,昨年度のフォーカスグループインタビューの結果を踏まえて,現在国際誌投稿へ向けて準備中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当事者主導研究チームの運営を継続し,フォーカスグループインタビューおよびディスカッションからナラティブを抽出した上で,回復促進要因・阻害要因についての仮説モデルの構築と精緻化を進めることが出来た.当初計画の量的研究は実施出来ていないが,仮説モデルを予備的成果としてシンポジウムで発表し,国内誌に報告した.回復阻害要因についてのモデルも,国際誌へ投稿準備中であり,着実に成果の発信につながっているため,おおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
精神疾患からの回復仮説モデルを,シンポジウム,国際誌および学会やウェブサイト等を通じて発信を進めていく.同時に,現時点での仮説モデルを元に,精神疾患を経験した当事者への調査を設計し,量的研究での仮説検証を進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に引き続き,当事者主導研究チーム運営に当初予定よりも時間をかけ,参画する当事者の状態に合わせて柔軟な対応を可能としたこと,及び,仮説モデルの精緻化に時間をかけたことから,量的研究の実施を平成30年度以降としたため.平成30年度以降,量的研究の立ち上げと実施及び成果公表のためのウェブサイト整備に使用する予定である.
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