精神病性疾患からの回復(recovery)には,地域生活の中で,当事者の主観的なウェルビーイングを高めることが不可欠である.当事者主導研究(User-led study)は,精神疾患を経験した当事者の主観的ウェルビーイング回復過程を明らかにする有力な方法だが,世界的にも少なく,我が国ではほぼ皆無である.本研究では,①精神病および重度精神疾患を経験した当事者を中心とした研究チームを組織し,②地域生活の中で当事者が主観的なウェルビーイングを回復する過程を,当事者主導の研究体制で明らかにしていくことである. 2019年度は,昨年度に引き続き,①フォーカスグループインタビューを通じて生成した回復過程モデルの公表と論文化,②回復過程モデルを基にした量的研究の準備と実施,以上の2点を進めた.①昨年度までに精神疾患当事者を含むチームでのディスカッションを通じて,回復促進要因に着目したモデルおよび回復阻害要因に焦点を当てたプロセスモデルを作成し,リカバリーモデルに精通する国際的なエキスパートからアドバイスを受けた上で,質的研究として論文化した.論文化はほぼ完了しており,間もなく国際誌に投稿予定である.②回復過程モデルを基にした量的研究については,リカバリーモデルの国際的エキスパートであるジェフ・シェパード氏を招聘し,リカバリーを測定するためのアウトカム指標とリカバリーを促進する上で組織の環境における影響要因についてアドバイスを受け,量的研究を行う上での評価ツールを再検討した.
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