研究課題/領域番号 |
16K13500
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
伊藤 正哉 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 認知行動療法センター, 室長 (20510382)
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研究分担者 |
竹林 由武 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (00747537)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | うつ病 / 不安症 / 認知行動療法 / 低強度 / セルフヘルプ |
研究実績の概要 |
本研究は、高強度療法を実施する前に、うつや不安の問題に対して幅広く使えるような、シンプルな認知行動療法をステップドケアモデルに照らして開発することを目標とした。具体的には、感情障害に対する診断横断的治療のための統一プロトコルのこれまでの研究実績を踏まえて、(1)統一プロトコルを低強度版にした “Light UP”のコンテンツを日本文化・臨床現場に合う形で開発し、(2)Light UPの実施可能性と有効性を検証する臨床試験の実施を目的としていた。本年度は、(1)の目的に照らして、統一プロトコルの低強度版の開発を検討し進めた。当初は、高強度版の要素を単純に短くした、5セッション程度からなる個人・集団療法として利用出来るプログラムを開発する予定であった。研究開始にあたって、ステップドケアモデルを改めて重視するとともに、これまでの研究データを用いて、日本人にとって最も重要な要素を再検討した(Curtiss et al., 2017, 竹林ら, 2017)。また、インターネットを通した治療や、セルフヘルプとして使える読書療法などの可能性も再検討した。そのうえで、セルフヘルプとしても、セラピストのサポートを得た個人・集団療法のマテリアルとしても使えるような、簡易的なワークブックの作成することした。また、米国ボストン大学でも類似の試みがあるという情報を得て、それらのコンテンツを参照した。ワークブックにおいては、統一プロトコルのさまざまな治療モジュールで実施される心理教育部分について、イラストを多用した分かりやすい提示法を検討した。高強度版の用紙類を全面的に見直し、なるべくシンプルなかたちの用紙に変更する作業を続けた。本年度は、ワークブック全体をデザインし、全9章の構成を整え、第4章までを試作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、高強度の統一プロトコルの内容をシンプルにして、日本文化に合わせた表現や呈示法に整えることで、低強度の統一プロトコルであるLight UPを開発し、その臨床試験を進めることを目的としていた。しかし、低強度版を開発する上で、高強度の統一プロトコルに取り組んだ過去の症例や研究データを入念に検討し直した。さらに、米国の研究者とのやり取りを通して、米国においても内容を簡易にした統一プロトコルを開発している情報を入手し、それらとの比較照合などを行った。これらの作業に時間を要したために、コンテンツの作成に当初予定したよりも入念に取り組むことになった。なお、当初予定していた計画に照らすとやや遅れている進捗状況の評価となるが、本研究を進めていく上で、過去の研究データの二次解析から重要な知見が得られ、ひとつはJournal of Affective Disordersに採択され、ひとつは不安症学会のポスター発表において若手優秀演題賞を受賞している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、入念に内容を検討したワークブックの開発を進める。予定していた臨床試験については、単群の前後比較試験ではなく、むしろ、ワークブックの暫定版を用いた症例の治療プロセスを詳細に検討する症例報告を通して、ワークブック最終版の完成を行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画として、本年度にLightUPのプログラムを開発し、その臨床試験を開始する予定であった。しかし、LightUPプログラム作成過程において、過去のデータ等を入念に再検討し、その論文化などに取り組んだために、LightUPプログラムの開発が遅れた。そのため、予定している臨床試験を開始しなかったために、それに予定していた支出が生じず、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度においては、試作版のLightUPプログラムを完成させ、症例検討を行うことを予定している。その過程で必要となるコーディネートやマテリアル作成補助の人件費のために使用予定である。
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