研究課題/領域番号 |
16K13501
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
伊藤 真利子 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 成人精神保健研究部, 流動研究員 (20726533)
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研究分担者 |
伊藤 まどか (丹羽まどか) 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 成人精神保健研究部, 流動研究員 (50771630)
金 吉晴 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 成人精神保健研究部, 部長 (60225117)
林 明明 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 成人精神保健研究部, 研究生 (90726556)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ストレス / PTSD / 認知機能 / 認知バイアス |
研究実績の概要 |
心的外傷後ストレス障害(PTSD)は自然災害や虐待、犯罪被害などをきっかけとして引き起こされ、トラウマ的出来事の記憶の想起や悪夢などの反復的・持続的な強い苦痛を伴う再体験が一つの特徴である。こうした症状を早期に発見し、適切な治療へと結びつける必要があるものの、診断・評価は専門家による長時間の面接を通して行われることが主であり、簡便に実施できる客観的な診断指標が乏しいのが現状である。 そこで、本研究では、PC上で実施可能な認知心理学的課題により健常統制群に対するPTSD群の特異性が見出せるかを検討することとした。dot probe課題では、感情的にネガティブな情報への注意の偏りが調べられた。また、単語再認課題では、感情的にネガティブな情報への記憶(学習)の偏りが調べられた。 今年度の実験では、健常統制群(非臨床、PTSD診断がない)30名の女性のデータを得ることができた。以前に収集済みのデータと合算して集計したところ(全て健常統制群、合計67名)、注意や記憶(学習)の顕著な偏りは認められなかったが、これらの課題成績と一部の心理尺度得点との間に有意な相関が認められた。dot probe課題での反応時間は、直前に提示された単語の種類によらず、特性不安・状態不安・抑うつと正の相関を示した。また、単語再認課題では、中立語やポジティブ語の正再認率(周辺情報を伴う想起)が特性不安と負の相関を示した。これらの結果は現時点では健常統制群のみから得られたものではあるが、不安や抑うつといった、PTSDに関連の強い要因が注意や記憶(学習)課題の成績に反映されており、PTSD群での結果が待たれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、研究実施環境・検査手続きの確立、および、健常統制群20名のデータ収集を今年度に予定していた。実際、予定していたデータ収集を完了し、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はPTSD群のデータを収集したい。その後、PTSD群と健常統制群の差の検討や、PTSD群内において重症度や性格特性(不安、抑うつなど)による課題成績の相違も検討する予定である。これらの成果をとりまとめ、国内外での学会や雑誌上での発表を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、当初の予定よりも実験が進み、実験参加者に支払う人件費が増えたために前倒し支払い請求を受けたが、少額の残額が生じた。また、学会参加・論文発表が当初の予定には至らなかったため、支出が少なかった。次年度は、実験参加者謝金、国内外の学会参加費や旅費、雑誌投稿のために支出予定である。
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