研究課題/領域番号 |
16K13502
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
伊藤 まどか (丹羽まどか) 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 成人精神保健研究部, 流動研究員 (50771630)
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研究分担者 |
金 吉晴 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 成人精神保健研究部, 部長 (60225117)
加茂 登志子 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 成人精神保健研究部, 客員研究員 (20186018)
臼井 真利子 (伊藤真利子) 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 成人精神保健研究部, 科研費研究員 (20726533)
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研究期間 (年度) |
2017-02-07 – 2020-03-31
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キーワード | 心的外傷後ストレス障害 / 複雑性PTSD / 認知行動療法 / STAIR/NST / オープンラベル前後比較試験 |
研究実績の概要 |
我が国の児童虐待相談対応件数は、103,260件(平成27年度)と報告されている。虐待は広範囲の問題と関連する公衆衛生上の重要課題であり、被害者の多くは後に心的外傷後ストレス障害(Posttraumatic Stress Disorder; PTSD)を呈する。回避不能なストレス状況に慢性的に暴露されることにより、PTSD症状に加えて感情調整困難や対人関係の問題を伴うようになる病態は、複雑性PTSDとして治療が困難な臨床群として指摘されている。複雑性PTSDは国際疾病分類の2018年改訂(ICD-11)で採用される見込みであるが、日本での効果的な治療は明らかにされていない。米国では複雑性PTSDに特化した治療として、STAIR/NST(Skills Training in Affective and Interpersonal Regulation/ Narrative Story Telling; 感情調整と対人関係のスキルトレーニングおよびナラティブストーリーテリング)が開発され、有効性が報告されている(Cloitre et al., 2010)。 本研究の目的は、複雑性PTSDに対する段階的な認知行動療法であるSTAIR/NSTの日本における実施可能性、安全性、有効性をオープンラベル前後比較試験によって検討することである。これは、複雑性PTSD患者を安全かつ効果的に治療するために特別な配慮を施したSTAIR/NSTの日本への適用を進める上で重要な課題である。 本年度は、研究実施計画に沿って、STAIR/NSTマニュアルとマテリアルの翻訳整備、複雑性PTSDの診断面接や自記式評価尺度の日本語版開発、治療の適切性評価とスーパーバイズ体制の確立、オープンラベル前後比較試験のプロトコル作成と倫理審査を行い、UMIN臨床試験登録システムに登録の上、臨床試験を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画では、本年度は、STAIR/NSTマニュアルとマテリアルの翻訳整備、複雑性PTSDの診断面接や自記式評価尺度の日本語版開発、治療の適切性評価とスーパーバイズ体制の確立、オープンラベル前後比較試験の開始を予定していた。実際、予定どおりに進められており、オープンラベル前後比較試験については、研究プロトコルを作成し、倫理委員会の承認を得た上で、登録および介入を開始している。今年度の臨床試験の登録人数はやや少ないが、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も臨床試験の登録、介入、評価を進めていく。来年度は、研究実施体制として、共同研究施設や治療担当者の拡充を検討しつつ、組み入れを進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、治療者育成のための海外での研修参加を計画していたが、STAIR/NST開発者の来日により、旅費等が生じなかった。また臨床試験の登録件数が予定より少なく、被験者への謝金や、スーパーバイズ費用、そのための翻訳費用などが次年度に繰り越されている。次年度は、臨床試験の介入担当者を研究協力者として雇用する予定であり、そのための人件費が必要となる。加えて、被験者への謝金や、治療の質を担保するためのスーパーバイズ関連費用に助成金を使用予定である。
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