本研究では、カラスの道具使用の運動要素である頭部到達運動の感覚運動メカニズムの解明を3つの点で行った。①頭部到達運動の高速撮影画像から眼球運動の計測を試みた。到達運動中の眼球運動は示唆されたが、高精度計測には至らなかった。②整形樹脂でクチバシを人工延長し、ついばみ運動をカラスとハトで比較した。カラスは直ちについばみ運動を調整したが、ハトはできなかった。③プリズムを用いて視野をずらし、ついばみ運動をカラスとハトで比較した。ついばみ運動軌道の誤差相関は、カラスでは、ごく微小時点間でのみ生じたが、ハトではほぼ全時点で相関した。以上から、カラスは頭部運動中に視覚による運動調整を行うことが示唆された。
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