本研究は、これまで高校についてはほとんど顧みられることがなかった「学級」にあえて注目することで、現代の高校教育システムがいかなる暗黙の規範に縛られているのかということを、従来とはまったく異なる視角から明らかにすることを目指すものである。その際に、本研究では「学級」の意味を、当事者である高校生の情報だけではなく、高校をすでに卒業した成人や当時の学級担任の視点から描き出す。こうした点を検討することにより、高校における「学級」がいかなる教育的意義を持ちうるのかが検証され、「学級」を自明視して成り立っている現代の高校教育制度のあり方そのものに重大な問題提起をしうる知見を得ることを目指している。研究1年目(平成28年度)は過去に実施した調査のデータ整理・分析を行なうと同時に、当時の調査対象であったクラスの担任および生徒に対してインタビュー調査を敢行した。その結果、当時の担任や生徒を経由しての、さらなるインタビュー対象者の探索は困難であることが判明した。そのため、研究2年目(平成29年度)においては、研究の方向性を再検討するために過去のデータ分析をさらに進めるとともに、学校側からのアプローチを図った。具体的には、現在の校長・副校長・進路部長へのインタビュー調査を実施した。その結果を受けて、最終年度に計画の調整を行い、既存データの分析・インタビュー調査および現在の高校生の学級意識を探るアンケート調査を実施して、最終的な研究成果のとりまとめを目指した。
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