研究課題/領域番号 |
16K13530
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田上 哲 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (50236717)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 教師の自己改革 / 自己否定 / 省察 / 都合の悪い思考 / 都合の悪い表現 / 授業研究 / 事例研究 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、教師の自己改革と「自己否定」的省察の本質を追究する基礎作業として、上田薫氏の「動的相対主義」の理論を詳細に検討するとともに、上田氏の祖父である哲学者西田幾多郎の「絶対矛盾的自己同一」をはじめとした思想を辿ることによって、上田氏の理論が西田の思想を引き継ぐものであることを明らかにすることになった。そのような基礎作業を踏まえて、経験科学、規範学から人間形成の学としての教育学の方向性を示し、その教育学を基礎づけるものとして授業分析を「事例研究」として捉え直し、さらに多様性(diversity)の問題を再検討した上で都合の悪い思考と表現をする子どもに焦点を当て教師の自己改革を促す「自己否定」的省察を促す授業研究(Inter-cultural Lesson Study)の基礎づけを行った。 研究成果については下記の発表を行った。 2016年6月12日に、九州大学伊都キャンパスで開催された九州大学・華東師範大学国際教育研究交流集会において、「「事例研究」としての授業分析」というテーマで口頭発表を行った。 2016年9月24日に、韓国・公州大学校において開催された、第5回九州大学・公州大学校国際学術研究フォーラムにおいて「Inter-cultural Lesson Studyに関する基礎的研究」というテーマで口頭発表を行った。 また、『Plus+(プラス)』2016年No.1(5月) No.2(9月) No.3(11月)(発行(株)フクト)において、教育方法学の観点から①「教育への二つの問い」②「子どもの思考・表現と人間形成」③「教師の自己改革と「自己否定」的省察」を連載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請予算の減額ならびに調査対象者の状況を踏まえて、当初の研究目的を実質的に達成することを目指して、3年間の全体の計画を下記のように修正した。 1年目(平成28年度)理論研究と仮説の構築 2年目(平成29年度)調査研究 最終年度3年目(平成30年度) 追跡調査研究および研究のまとめ 修正した研究計画に照らして、研究の進捗状況としては、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、平成28年度の理論研究とそれに基づく仮説を踏まえて、調査研究を行う。現時点では、国内、韓国(ソウル)、台湾(台北)、中国(上海)、ならびに可能であればカナダ(トロント)において、教師からの聞き取り調査を行う予定である。具体的には、教職経験を通して、自分の実践もしくは同僚等他の教師の実践における、都合の悪い思考と表現をする子どもに関する事例、エピソードを収集する。収集したデータについて分析を行い、比較検討するとともに、翌(平成30)年の追跡調査(授業の参与観察、聞き取り)に向けて、対象者の選定と調査に関する調整を行う。 カナダ(トロント)における調査の対象ならび日程調整等が一つの課題であるが、九州大学教育学部と交流協定を結んでいるトロント大学オンタリオ教育研究所(カナダ)への研究協力の依頼・相談を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請額の減額ならびに調査対象者の状況等の変化に応じて、研究目的の実質的な達成を目指して、研究計画の修正を行った。 今年度は、調査を少なくしたため、旅費ならびに謝金等の支出が少なくなった。 次年度は使用計画にあるように、韓国、台湾、中国、カナダへの調査研究を行う予定のため、旅費ならびに謝金の支出が増加するため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、平成28年度の理論研究とそれに基づく仮説を踏まえて、調査研究を行う。現時点では、国内、韓国(ソウル)、台湾(台北)、中国(上海)、ならびにカナダ(トロント)において、教師からの聞き取り調査を行う予定である。具体的には、教職経験を通して、自分の実践もしくは同僚等他の教師の実践における、都合の悪い思考と表現をする子どもに関する事例、エピソードを収集する。収集したデータについて分析を行い、比較検討するとともに、翌(平成30)年の追跡調査(授業の参与観察、聞き取り)に向けて、対象者の選定と調査に関する調整を行う。
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