研究課題/領域番号 |
16K13538
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
長谷部 圭彦 早稲田大学, イスラーム地域研究機構, 次席研究員(研究院講師) (60755924)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 義務教育 / オスマン帝国 / イスラーム / 東洋史 / 教育史 / 世界史 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、オスマン帝国(ca.1300-1922)における義務教育の実施過程を実証的に明らかにすることである。研究代表者は、その法制化過程を、従来の説を覆すかたちですでに明らかにしているので、本研究では、その実施過程を検討する。たとえば、実施の主体、実現の程度、反発の有無、性差や地域差、宗教共同体の反応、などである。 本研究では、こうした点を、歴史学の手法により明らかにする。すなわち、オスマン語(アラビア文字で記されたトルコ語の文語)の一次史料を、刊行・未刊行を問わず収集・閲読し、こうした点を実証的に解明する。刊行史料としては、『官報』『国家年鑑』『公教育省年鑑』などのほか、種々の「学事統計」を用いる。未刊行史料としては、トルコ共和国首相府オスマン文書館(於イスタンブル)に収蔵されている手書きのものを用いる。具体的には、勅旨分類、ユルドゥズ分類、大宰相府分類、公教育省分類などを使用する。 こうした文書史料を収集するために、研究代表者は、平成30年2月下旬から3月中旬にかけてイスタンブルに滞在し、同文書館において研究を進めた。また、現地の多数の研究者と知り合う機会を得た。また、市内の書店・古書店においても、刊行史料や研究文献を購入した。他方、研究成果の一部は、研究代表者が組織した国際シンポジウム「近代オスマン帝国の軍事と教育」(早稲田大学、10月1日)において、"Two Introductions of Compulsory Education: The Ottoman Empire and Meiji Japan"というタイトルで公表した。また、上記の「学事統計」については、『イスラーム地域研究ジャーナル』10号において紹介した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記した研究計画に照らして、平成29年度の進捗状況を自己点検する。 海外調査については、計画では、イスタンブルにおいて、本研究に必要な史料や研究文献を収集する予定であった。そして実際に、同地においてそれらを収集した。国内学会については、計画では、国内学会に数回参加する予定であった。そして実際に、日本中東学会(5月)、史学会(11月)、大学史研究会(11月)の年次大会に参加した。大学史研究会では、オスマン帝国の法曹の養成に関する報告も行った。史料の精読と論文執筆については、計画では、十分な時間をこれに充てる予定であった。しかし実際は、十分とは言い難い時間しか充てられなかった。 研究計画にはなかったが、平成29年度は、以下の成果を得た。オスマン帝国と日本の交流史に関する史料集(日本語・トルコ語併記)を、三沢伸生氏(東洋大学)、シナン・レヴェント氏(アンカラ大学)とともに編纂し、刊行した(2月)。研究代表者が企画した国際シンポジウムにおいて、オスマン帝国と日本における義務教育制度の法制化につき、英語で報告した(10月)。南山大学主催の共同研究において、クリミア戦争後の改革勅令(1856)について報告した(1月)。 以上を総合すると、本研究は、概ね順調に進展しているといえよう。
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今後の研究の推進方策 |
概ね申請書に記したとおり研究を進める。 平成30年度は、海外調査を1回、和文論文の投稿を1回、国内学会への参加を数回行う。海外調査については、前々年度、前年度と同様、イスタンブルに二週間ほど滞在し、資料収集を継続する。和文論文については、『日本の教育史学』への投稿を目指す。投稿の条件である学会報告も行う。国内の学会にも、これまでどおり参加する。とくに大学史研究会では、平成30年度から、研究セミナーを企画する役職に就いたので、学界の発展に資するテーマでセミナーを組織したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)「次年度使用額」が約55万円生じたのは、イスタンブルへの渡航費、宿泊費、日当を、別予算(文部科学省「特色ある共同研究拠点の整備の推進事業(イスラーム地域研究拠点)機能強化支援」)との合算でまかなったためである。 (使用計画)平成30年度の配分額は104万円なので、前年度の繰越金約55万円と併せると、約159万円が30年度の予算となる。その項目ごとの明細は以下のとおりである。設備備品費30万円、消耗品費10万円、国内旅費25万円、外国旅費60万円、人件費・謝金24万円、その他10万円
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