研究課題/領域番号 |
16K13542
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研究機関 | 就実大学 |
研究代表者 |
高木 亮 就実大学, 教育学部, 准教授 (70521996)
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研究分担者 |
清水 安夫 国際基督教大学, 教養学部, 上級准教授 (00306515)
露口 健司 愛媛大学, 教育学部, 教授 (70312139)
高田 純 香川大学, 保健管理センター, 講師 (30647475)
藤原 忠雄 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (30467683)
波多江 俊介 熊本学園大学, 商学部, 講師 (70733715)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 教職キャリア / 日本の教師の発達課題仮説 / 教師のストレス / 教師の幸福・充実 / キャリアの質的測定方法 |
研究実績の概要 |
研究計画のうち平成28年度に着手したものは4領域である。 第一領域である“学際的な教職キャリアの検討”については平成28年10月日本教育心理学会総会(香川県)で会議を持った際に教職経験研究参加者(藤原、清水、長谷)よりErikson,E.HやSuper,D.E.,さらにSteffy,B.Eなどを基に、「6段階の教師の発達課題仮説」の提示を受けた。こえは6つの発達段階の段階期間やその課題、危機について総合的に論じた仮説モデルである。現在、複数名で査読誌に投稿中であるが、仮説提案の議論と言うこともあり様々な建設的批判を受けているさなかである。 第二領域である“学校・教師文化の検討”については教育経営学の視点から519名の教諭対象の幸福・充実感調査研究を実施し、平成30年度に学会発表を行うよう分析を行っている。 第三領域である“キャリア・アイデンティティの検討”については臨床心理士でもある研究参加者(高田、長谷)よりキャリアを質的に描画するTEM分析およびライフライン分析の採用と簡易性を意識した独自の質的調査法の作成提案がなされた。これについても現在査読誌に投稿中である。 第四領域である“労働者健康性確保研究”については主にレビューを中心に教師の健康と不健康の関係を議論した。近年の健康観は不健康研究の逆転ではない以上、ストレス研究などの不健康対策とは別に健康・充実感向上対策が別途必要であるとの議論を研究参加者の上で行った。これらの議論は日本教育経営学会編『現代的教育課題と教育経営』および『教育経営学ハンドブック』に調査内容をあわせて寄稿済みである。 以上のように、平成28年度研究成果はデータ収集、レビュー等のとりまとめによる論点整理、新規仮説の提案などを形作るものからなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、日本の教師のキャリアおよび発達課題検証のレビュー論文と発達課題仮説について論文の2論文を投稿中である。また、教師のキャリアについての測定方法論の課題およびその課題克服に関わる2つの質的測定法(ライフライン補およびTEM分析)への着目に関する議論を論文にまとめ投稿中である。このほかにも519名の教師対象の幸福を目的変数とした独自調査を実施し分析中である。他に、以前の研究成果のとりまとめに関する書籍作成の中で、教職キャリアに関する研究課題意識・展望に関する章を新たに作成し(平成30年度3月末刊行予定)、日本教育学会記念出版事業依頼論文2部(平成30年5月刊行予定)において本科研により収集した資料を報告する機会を得た。いずれも、平成28年度より開始し、進展したレビュー、調査実施、論考としては予測以上の進度であるといえる。 一方で現在のところ公表を終えた成果は学会発表が主であり、刊行済み、の論文数はあまりない。また、研究自体の目的が挑戦的、萌芽的な、「教職キャリアの発達課題仮説の提案」であり、これは実証データを基に提案が困難な大きな仮説の提案を意図したものである。投稿時の査読者反応や学会発表での議論は概ね好意的ながらも建設的批判として論点や基本設計に改善を求めるものも多い。来年度にも相応の検討と必要なモデル改善を行った上で内容も含めて修正を行いつつ研究をまとめる必要がある。 また、国際学会での発表計画が現段階の成果では認められなかったため、平成29年度の研究成果を整理・蓄積した上で平成30年度以降に展開を行う必要が生じたことが残念であった。 以上を総合し“おおむね順調”な研究進展状況にあると自己評価を行う。
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今後の研究の推進方策 |
第一領域である“学際的な教職キャリアの検討”については論文投稿の段階であり、査読者意見に丁寧に対応することが平成29年度の課題である。第二領域である“学校・教師文化の検討”については調査を実施済みであり、学会発表(平成29年6月等を予定)の批判を受けて論文としてまとめる段階である。また、平成29年度中にほぼ同規模の調査対象者数を見込んだ発展調査を実施予定である。第三領域である“キャリア・アイデンティティの検討”については論文投稿の段階であるが、厳しい意見や追加の方法論整理の必要が生じつつある。第四領域である“労働者健康性確保研究”については依頼論文に寄稿を行っているものの、レビューの段階にとどまるため、第二領域での実施予定調査の中に関連変数を追加することでストレスと健康と幸福という類似ながらことなる3概念の関係性をより詳しく検討する予定である。 平成29年度重点課題である第五領域“海外研究との交流”については現成果の範囲の中では国際学会等の発表は認められなかった。そのため、査読のない発表や平成30年度以降を見据えて海外での発表、議論の展開方法を再設計する必要が生じた。なお、海外発表の展開には現在、とりまとめた発達課題仮説の先行研究のレビュー的補強や若干数の質的調査だけでなく相応の規模の量的調査が必要な見通しである。平成29年度はこのような大規模質的調査の予備調査であり、環境整備に注力する見通しである。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度研究成果に関わる各貢献が文献レビューおよび仮説提案に関わる議論に重点が置かれ、成果の学会等での発表や調査のための出費があまり執行されなかった。そのため、若干の使用額のずれが生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は調査および発表を2年間の予定通り遂行するため、一部ずれ込んだ予算を適切かつ確実に遂行する。
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