研究課題/領域番号 |
16K13543
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
畔上 泰治 筑波大学, 人文社会系, 教授 (70184174)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ドイツ領東アフリカ / アレックス・カピュ / 青少年有害メディア審査機関 |
研究実績の概要 |
1ドイツ植民地下のアフリカの状況に関する研究:現在のドイツにおける移民や非キリスト教文化圏出身者に対する民族的な意識を歴史をさかのぼり考察するために、平成28年度は予備的な研究としてJ-Aゴビノーの著作と第一次世界大戦前後の時代におけるドイツとアフリカとの関わりに関して調査した。具体的には、ゴビノーの『人種不平等論』の読み込みと、ドイツの植民地下にあったアフリカに関して、とりわけ「ドイツ領東アフリカ」の状況を記した文献を中心に資料を集めて分析し、ドイツ人がアフリカ植民地において現地民とどのように関わっていたかを検証した。その中で、今年度の研究成果の一部として、文学作品に描かれた1910年代のアフリカ植民地の様子を考察した。アレックス・カピュ『アフリカで一番美しい船』を分析し、そこに描かれたドイツのアフリカ植民地経営上の問題点と、第一次世界大戦時下アフリカで展開された交戦場面を分析した。その成果を学会において発表し、また論文として発表した。 2ドイツにおける聞き取り調査:9月5日から10日間、ドイツに出張し現地調査と資料収集を実施した。(1)ミュンヘンにおいては、ドイツ人以外の外国人観光客も多く訪れる市役所前で、移民の受け入れに否定的で、排斥を唱える団体PEGIDAの活動を調査した。(2)ハンブルク、ブレーメンにおいて、ドイツ植民地がドイツにもたらした物資の交流、文化的影響に関する資料を収集・確認した。(3)ビーレフェルト大学図書館において、1910-20年代を中心としたドイツとアフリカ諸国の諸問題に関する資料を収集した。(4)ボンにおいて、青少年有害メディア審査機関を訪問し、副所長P.マイアー氏と面会し、現在のドイツにおけるメディアを通した移民排斥活動に関してインタビューを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1 アフリカ出身者に対する、現在のドイツ人のメンタリティーを知るために、ドイツとアフリカの交流の歴史的な背景の検証を始めたが、その資料の収集・分析に想定以上の時間を要したため。 2 ゴビノーの文献の読み込みに想定以上の時間を要しているため。 3 シリア内戦やアフリカの状況を背景にヨーロッパに大量の移民が流入し、ドイツにおいても移民排斥、移民受け入れに反対を唱える運動は活発化した。その結果極右的な主張も顕在化する一方で、それに対する取り締まりも強化された。こうした流れの中で、極右系の団体の集会やコンサート等に対する取り締まりも強化され、資料収集、現場確認も難しくなったため。 4 2013年のドイツ議会選挙では、ドイツ国家民主党(NPD)が青年組織を動員して10代の若者を中心に学校の前で無料の宣伝用音楽CDを配布し、大きな問題となったが、2017年9月の議会選挙ではNPDに代わり、とりわけ移民問題に関してはAlternative fuer Deutschland(AfD)の活動が注目されている。この団体に関しては、現時点では選挙を目的とした目だった過激な音楽活動は行なっておらず資料集めが進まなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
1 平成29年度においては、引き続き、ゴビノー、グラント、チェンバレン等の文献の読み込みを行なう。 2 ドイツ等において引き続き移民問題に関する現地調査を実施する。とくに、コンサートなどの集会や各種のメディア媒体を動員した青少年勧誘活動の状況を調査する予定である。 3 青少年有害メディア審査機関が開催を予定している年次総会に出席し、現在のドイツにおける青少年有害メディアに関する報告を聞き、また同時に所長、副所長にインタビューを実施し、資料を得る予定である。 4 インターネット上で公開されている音楽映像を調査して資料を集め、極右団体の主張を分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった書籍の発行が遅れている等により、資料用物品費や現地調査旅費を次年度使用額としたため。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度において、資料用物品費や現地調査旅費の一部として使用する予定である。
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