研究課題/領域番号 |
16K13546
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
服部 美奈 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (30298442)
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研究分担者 |
西野 節男 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (10172678)
サルカルアラニ モハメドレザ 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (30535696)
DANISMAZ Idiris 同志社大学, 高等研究教育機構, 助教 (70631919)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イスラーム教育 / イスラームの子ども観 / 通過儀礼 |
研究実績の概要 |
本研究は、イスラーム思想のなかの「子ども」に焦点をあてることを通して、イスラームにおける発達観・教育観を明らかにすることを目的とする。ここでいう発達観・教育観は固定的なものではなく、ローカルな文脈のなかで解釈・実践され、生成される動態的なものである。研究では、これまでの主な対象地域であるインドネシアでこれまでに得られた知見から、「子ども」に関する分析枠組みを示し、国際比較研究(インドネシア、マレーシア、トルコ、イラン)を行なう。ここから、イスラーム思想のなかの「子ども」を国際比較の観点から論じ、イスラームにおける発達観・教育観を示す。研究の具体的な進め方としては、①思想研究:イスラームのなかの「子ども」に関する思想研究、②現地調査:各地域の通過儀礼・宗教学習に関する現地調査、③理論化:①②の分析と国際比較をふまえた理論化を行う。 2017年度は主に2つの研究を実施した。第一に、イスラームのなかの「子ども」に関する思想研究に関して、各地域を担当する分担者が、適宜、海外研究協力者との協働により、担当地域のイスラーム教育思想に関する文献を収集・分析した。その際、「子ども」に関連する思想を抽出し、教育観を考察した。第二に、各地域のイスラームのなかの「子ども」観と、子どもの発達に応じて行われる通過儀礼・宗教学習に関する現地調査を実施した。2017年度はイランとトルコで調査を行う予定であったが、トルコに関しては昨年度と同様、現地での調査が困難であると判断し、イギリスにおけるトルコ移民家族を対象に現地調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度に実施した2つの研究、具体的には、①イスラームのなかの「子ども」に関する思想研究、③各地域の「子ども」観および通過儀礼・宗教学習に関する現地調査は、ほぼ予定通り進んでいる。 2018年2月実施の研究分担者によるイラン調査では文部省を訪問し、文献調査を行った。またテヘラン教育委員会を通して、テヘランのアンヂシェ小学校(女子と男子)とレジャー小学校(男子)を訪問し、様々な学年の授業実践を観察した。さらに、イラン文部省の調査官と管理職に対し、イスラーム思想における「子ども」や「発達」、「教育」に関する意見交換を実施した。これらを通して、現在イランの思想における子ども観・発達観・教育観について、イランにおけるローカルな実践と解釈が明らかになった。同年3月に実施した国内調査では、関係機関で資料収集を行うとともに、特にシーア派のなかの「発達」・「教育」という概念・観・思想・「practice」などを国際比較の観点から考察するため、東京のイラン人学校の校長他と面談し、学習過程にみられるイスラームの子ども観と教育観、教科書(高等学校の4冊―宗教と生活―)に関する聞き取りを行った。 2018年3月実施の研究分担者によるイギリス調査では、バーミンガム中央モスク、Golden Hillock School、Jamatia Islamic Center、Millbrook Primary School(市立小学校、Swindon市)、週末に開催されるトルコ系児童向けの宗教文化学級を訪問し、関係者への聞き取りを行った。調査では、国立高校における宗教教育、モスクにおける宗教教育、非ムスリム社会におけるムスリムと非ムスリムとの調和などに関して多くの情報を得た。特にトルコからの移民家族が非ムスリム社会の環境でいかにイスラームの子ども観を保持あるいは変容させるかについて新たな知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も計画通り、研究を進める。ただし、前述したように現地調査については対象国の政情を鑑みながら、柔軟に対応する予定である。本研究では、①思想研究:イスラームのなかの「子ども」に関する思想研究、②現地調査:各地域の通過儀礼・宗教学習に関する現地調査、③理論化:①②の分析と国際比較をふまえた理論化、を研究の柱にしている。②現地調査は、イスラームと地域文化との融合、各地域における独自の展開を考察する上で重要であり、さらに③理論化との関係で、イスラームの発達観の普遍性と地域の多様性を明らかにするための国際比較研究が不可欠である。 万が一、現地調査が困難な場合は、海外に居住する当該国の家族を対象にインタビューを実施する等、解決方策を考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度に実施した現地調査(イラン、イギリス)に関して、当初、研究代表者も研究分担者と共にイラン現地調査に加わる予定であったが、諸事情からイランへの渡航に困難が生じ、渡航を次年度に延期したために次年度使用額が生じた。
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