本研究は、2015年4月25日に発生したネパール大地震及びその復興プロセスが、同国の公立小中学校や子どもに与えた影響、並びにその背景にある構造を明らかにすることを目的とした。また、国際協力機構(JICA)支援の「住民参加による学校運営強化」プロジェクトが、復興や防災体制強化を進める上で一定の役割を果たしていることの検証も目指した。 本研究の1年次と2年次では、対象校の復興プロセスを視察、インタビュー、質問票調査等でフォローし、学校運営やコミュニティが果たす役割を確認した。 本研究の最終年度である3年次(2018年度)は、ネパール地震発生から3年目に当たった。対象郡において地震発生以来ずっと復興プロセスを見守ってきた対象2校において、継続して復興支援活動を視察しながら、復興が進んだ学校で行われ始めた防災活動にも着目して、「参加型評価ワークショップ」を開催した。 同ワークショップでは、教員や保護者、生徒とともに、「地震発生時以降の振り返り(活動年表作成)」を行って、時系列に復興プロセスを可視化した。また、将来に向けて学校における防災体制を強化するために、「防災教育の理解度と実践度に関するレーティング活動」を行い、参加者と研究者で復興プロセス全体からの学びを共有した。 また、参加型評価ワークショップ、及び研究の1年次と3年次に行った質問票調査の結果比較に基づいて、学校運営が機能するには、校長のリーダーシップ、行政官のモニタリングが重要であること、学校運営の強化はコミュニティとの結びつきを強め、復興プロセスに正の影響を与えることを検証し、ネパールにおける「学校運営強化モデル」を開発した。 本研究での成果を踏まえ、2019年度基盤研究Bに採択された新たな研究では、安全で安心な学校づくりにおける学校運営強化モデルの有効性検証を目指す。
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