本研究の目的は、学力の階層差問題、教育機会不平等の維持問題の発生源としての学業成績の規定因に関する中核的なメカニズムを、<ハビトゥスのコード変換>の観点から、児童生徒約1200名のコーホート(平成28年度の小学第一学年から第六学年)に対する3年間の個別追跡縦断介入研究によって明らかにすることである。 本研究の目的を達成するため、3年目である平成30年度においては、関東地方の市区町村レベルの4教育委員会の5小学校と4中学校の研究協力のもと、従属変数である児童生徒を対象とする各種学力テストと独立変数である児童生徒を対象とするアンケート調査、生活習慣・学習習慣改善手法(HQC)の介入研究、保護者・担任教諭・教科担当教諭を対象とするアンケート調査を実施した。 平成30年度に発表した主な研究成果は、子どもの学力の成層性に対する家庭環境の経済的資源と文化的資源の機能の差異に関する論文と、小中学生における学業成績の多様性と家庭環境の差異、および児童の学業成績に対する運動時間の独自関連性と至適運動時間に関する学会発表である。 本研究成果の重要性は、家庭環境の影響を統計的に取り除いてもなお有意な学業成績の規定因子を見出した点にある。これらの研究成果は、一般公開の学会シンポジウム、研究対象4教育委員会校長会の研修会、小中学校の家庭教育学級等にて、国民・学校長・教職員・保護者・児童生徒に対して、教育実践に資するためにフィードバックされた。 なお、平成29年度日本発育発達学会第16回大会での学会発表「児童の学業成績に対する出身家庭の独自関連性-個人内要因の統計的制御による推定-」は優秀研究賞を受賞した。また平成30年度日本発育発達学会第17回大会での学会発表「児童の学業成績に対する運動時間の独自関連性-至適運動時間の検討-」は最優秀研究賞を受賞した。
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