研究課題/領域番号 |
16K13558
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
廣里 恭史 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (40262927)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 発展途上国 / 高等教育 / 教育イノベーション / 持続可能な開発 / オンライン教育 / ブレンド型学習 |
研究実績の概要 |
本研究は、発展途上国の高等教育に関し、「教育2030」行動枠組に含まれる「質の高いかつ適切な高等教育への公正なアクセス」の達成を目標とする事例を取り上げ、①対象層(特定・不特定)、②費用(高・低)、③ネットワーク(有・無)という基準によって8つの類型に分類し、それら事例の比較研究によって、効果を高める要素や特徴を明らかにすることを目的とする。 平成29年度は2年度目であり、主として:(1)東アジアと東南アジアにおける現地調査、及び(2)比較事例研究の対象地域における教育イノベーション事例の発掘と分析を目的とした、文献・資料サーベイを行った。 具体的には、ユネスコ・バンコク事務所を訪問し、教育イノベーションの効果に関する意見交換を行った。チュラロンコーン大学、チェンマイ大学、チェンライ・ラチャパット大学、メーファールアン大学、「ザビエル学習コミュニティー(チェンライ近郊にあるイエズス会が設立した高等教育機関)」において、それぞれオンライン教育の現状と課題についての聞き取りと資料収集を行った。特に、チェンマイ大学では、同大学の「デジタル大学戦略」に沿った「ブレンド型学習」の取り組みの詳細についての聞き取り調査を行った。 また、東アジアにおける高等教育における教育イノベーションの状況と政策課題について聞き取りを行った。中国(北京)の清華大学において、新たに設立された「アジア大学連盟(Asia University Alliance :AUA)」の国際事務局を訪問し、中国の「一帯一路」イニシアティブと人的資源面で「一帯一路」イニチアティブを支える潜在性のあるAUAの役割について意見交換を行った。台湾(台北)において、国立台湾大学を訪問し、台湾におけるオンライン教育を中心とする教育イノベーションの事例と政策的課題について聞き取りを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度(初年度)の進捗は概ね順調であった。平成29年度は、2年度目であり、東・東南アジア諸国での聞き取り調査、及び教育イノベーションに関する文献・資料サーベイを行った。太平洋州諸国での現地調査が予定されていたが、研究代表者が、所属研究機関の役職(上智ASEANハブ・センター長)に就いていたため、時間的に太平洋州諸国における現地調査を実施することは困難であった。 代わりにタイを訪問し、大学におけるオンライン教育の現状と課題についての調査を行った。特に、チェンマイ大学では、同大学の「デジタル大学戦略」に沿った「ブレンド型学習」の取り組みの詳細についての聞き取り調査を行った。またイエズス会が設立した高等教育機関である「ザビエル学習コミュニティー」では、北部タイの小数民族を対象とした英語を教授言語とする教学プログラムを提供しており、オンライン教育を取り入れた「ブレンド型学習」について聞き取りを行った。 平成29年度の研究成果を公表する場としては、タイおいて、ユネスコ・バンコク事務所と東京大学が主催した高等教育の国際化指標に関する国際会議において「“Regionally Aligned” Student Mobility: A Key Domain for Indicators of Higher Education Internationalization」と題した招待講演を行い、特にASEAN地域におけるオンライン教育を用いた学生移動プログラムの革新的な取り組みについて報告した(報告資料を準備し、費用の一部を負担した)。 雑誌論文として発表した「岐路に立つラオスの高等教育」では、ラオスにおける高等教育へのアクセスと質の改善のため、ICTを駆使するオンライン教育の可能性や有効性を示唆している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、平成30年度の前半においては文献・資料サーベイを継続し、高等教育における教育イノベーションに関する最新の動向を纏める。また、平成28年度・29年度に続いて、東・東南アジア諸国を訪問し、聞き取り調査のフォローアップを行う。引き続き時間的かつ予算的制約があるものの、カリブ海諸国あるいは太平洋州諸国のどちらかにおける現地調査の実施へ向けて最善の努力を継続する。 平成30年度の後半においては、研究成果の取り纏めを行う。成果報告書の作成、学術論文の作成、商業出版へ向けた出版計画書の作成、国際会議・学会での発表、等を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に予定していた海外の現地調査について、太平洋州諸国を対象とした調査が実施できなかった。また、国内での研究打合せを、東京在住の研究者と行ったため、国内旅費が発生しなかった。 平成30年度は、高等教育と教育イノベーションに関する文献購入、東・東南アジア諸国における海外調査の実施、海外での現地調査用のノートパソコンの購入、国際会議・学会への出席、研究補助員の雇用、成果報告書の作成、などを予定している。さらに、カリブ海諸国あるいは太平洋州諸国における現地調査については、どちらかの地域における調査の実施へ向けて最善の努力を継続する。
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