研究課題/領域番号 |
16K13565
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
市川 寛也 筑波大学, 芸術系, 助教 (60744670)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 妖怪文化 / 地域学習 / ワークショップ / 観察力 / 想像力 / 表現力 / データベース / まち歩き |
研究実績の概要 |
本研究は、地域文化としての妖怪に焦点を当て、既存の伝承を掘り起こすだけではなく、現在のまなざしから新たな妖怪をつくりだすワークショップ(妖怪採集)の実践を通して、教科横断型の学習プログラムを構築することを目的とするものである。初年度は、徳島県三好市、大阪府大阪市、茨城県水戸市において実践研究を行った。 徳島県三好市では、平成29年4月からJR四国が実施する「ディスティネーション・キャンペーン」に向けて、道の駅大歩危と連携したプログラムを開発した。地元住民による妖怪文化の活用に取り組んでいるこの地域において、観光客がそれぞれの視点で環境と向き合うきっかけを創出することを目指し、モニター企画を通して効果を検証した。 大阪府大阪市では、日本文教出版が運営に携わる「こども美術館スカイミュージアム」(あべのハルカス27階)の事業の一環として、「あべの妖怪研究所」というプロジェクトを実施した。国立民族学博物館における鑑賞プログラムやまち歩き企画を通してオリジナルの妖怪を創作し、「小さな妖怪展」を開催した(平成28年10月2日~10日)。会期中の10月8日には、教育関係者を対象として「歩いて、観て、想像する―「妖怪採集」から探る授業づくり」と題したワークショップを行った。 茨城県水戸市では、地域に根差したアートプロジェクトを展開する「こどもおとなtown project」との連携企画として、小学生を対象とするプログラムを実施した(平成28年5月15日、11月12日)。 上記の実践と並行して「妖怪採集データベース」の開発を行った。このデータベースでは、各地で開催されるワークショップの成果を集約し、妖怪を通して地域の特徴を可視化することを目的とするものであり、29年度中の公開を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初はこれまで東京で実施してきたプロジェクトを継続していくことを想定していたが、徳島、大阪、茨城と各地での取り組みが始まったことで研究内容に面的な拡がりを持たせることができた。各地域で、道の駅、こども美術館、こどもおとなtown projectとプロジェクトの受け入れ態勢ができたことも今後の研究を推進していく上での大きな原動力となる。これにより「妖怪採集データベース」の内容の充実を図ることができ、妖怪を通した地域学習の効果を比較検証することが可能になった。 また、活動の対象も小学生、高校生、大学生、社会人と幅広く実施できたため、それぞれの段階に応じたプロジェクトの進め方を検討する機会が得られた。一連の実践を通して、一般向けと子ども向けの「妖怪採集帖」および「妖怪採集データベース」というツールを構築することができたため、今後はこれらの有効な使い方を開発していくことになる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、初年度に開発した「妖怪採集帖」を活用したプロジェクトを各地で推進するとともに、それぞれの現場で得られた成果を「妖怪採集データベース」に反映させていく。現段階では、データベースを公開する段階には至っていないため、今年度中に一般公開に向けた開発を進め、効果と課題を明らかにしていきたい。 これと加えて、学校との連携も積極的に推進していく。徳島県三好市では、地元の高等学校におけるプロジェクト型の学習に参画し、地域学習の素材としての妖怪の取り上げ方を検討していく予定である。大阪府大阪市にある「こども美術館スカイミュージアム」では、平成29年4月より始まった常設展の一角に「あべの妖怪研究所」の活動を追体験するコーナーが設けられたため、一般来館者の参加を得ながら妖怪採集データベースが更新されていく仕組みを構築していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
データベースの製作に要する費用について、非公開の内部システムの構築と公開用データベースの開発(デザイン含む)にかかる費用のバランスを調整し、当該予算の一部を繰り越したため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に開発を進める公開用データベースの開発に充てる。
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