本研究では、①地域住民参加型による妖怪伝承データベース(妖怪採集データベース)の構築、②データベースに基づく地域学習支援ツールの開発、③それらを活用した教育実践の検証に取り組んだ。なお、本研究で用いる「妖怪採集」とは、まちを歩きながら妖怪がいそうな場所を探し出し、その場所をめぐる物語を想像するワークショップを指す。そこでの成果を蓄積し、公開するためのアーカイブとして「妖怪採集データベース」を作成した(http://妖怪採集.com/)。 平成29年度には、徳島県三好市にある「道の駅大歩危」を拠点に、夏休みの児童向けワークショップとして「妖怪採集in大歩危」を開催し、自然環境をもとにした地域散策の方法を検証した。本事業は徳島県立池田高等学校探究科の授業と連携して行い、妖怪文化を活用した地域活性化を学ぶ素材としても活用された。また、研究代表者が所属する東北芸術工科大学においても、授業課題の一環として「妖怪採集」を実施し、周囲の環境に対する「観察力」と現実の場所から物語を思い描く「想像力」を育むプログラムとしての有効性を検証した。 また、具体的な地域学習支援ツールの開発として、地域への気付きを促すカードゲームを作成した。まち歩きを通して発見したスポットをもとに道のカードを作成し、それらをつなげながらオリジナルのルートを開拓していくこのゲームでは、参加者同士が対話をしながら地域への理解を深めることができる。このカードゲームと「妖怪採集」のワークショップとを連動させることで効果的な地域学習方略を構築することができる。 今回の研究課題では「妖怪採集データベース」を作成するにとどまったが、今後は各地の妖怪文化の活用状況を把握し、それらを通して地域学習を深めていくことができるようなウェブページを開発していくことを計画している。
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