研究課題/領域番号 |
16K13566
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山本 容子 筑波大学, 人間系, 助教 (40738580)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | バイオフィリア / 生命愛 / 環境教育 / ディープ・エコロジー |
研究実績の概要 |
本研究は、生徒のバイオフィリアへの気づきを促し、環境倫理意識を高め、環境保全に寄与する態度と行動力を育成する高校生物の生態学分野における環境倫理教育プログラムを開発し、環境倫理教育の理論と実践に関する基礎知見を得ることを主目的としたものである。 バイオフィリアは、人間が「生命および生命に似た過程に対して関心を抱く生得的傾向」と定義されている(Wilson, 1984)。近年、欧米では、子どものバイオフィリアを活性化する教育および学習環境の議論や、バイオフィリア仮説に基づいた教育プログラムの開発、実践が広まりつつある。 前年度は、近代の生物学の流れの中でのバイオフィリアの出現・展開、環境思想の流れとの関連、大学の生物学の教科書への導入の特質を明らかにした。 今年度は、さらなる文献調査の結果、アメリカでは小学校の学習環境の設定にバイオフィリック・デザインを取り込み、それを使った体験学習のアプローチが検討、実践されていること、子どものバイオフィリアの育成時期として、幼児教育、初等教育段階が適切であるという議論がなされていること、子どものバイオフィリアを引き出す活動を導入したアプローチにより、認知と言語の発達などの教育実践目標の達成を図るような教育プログラムが行われていることが明らかになった。また、申請者がこれまで行ってきたディープ・エコロジーの視点を導入した環境教育とバイオフィリアとが関連した教育理論・実践研究が盛んに行われていることが明らかになったため、文献調査と並行して、高校生物の生態学分野におけるディープ・エコロジー教育の過去の実践より得られたデータの再分析を行い、環境倫理意識を高め環境保全に寄与する態度を育成するための環境倫理教育のあり方についての検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画段階では、初年度(前年度)に、近代の生物学、および、環境思想の流れの中でのバイオフィリアの出現・展開と、大学の生物学の教科書への導入の特質を明らかにし、今年度は文献調査の結果をもとにして日本の小学生・中学生・高校生を対象とした、バイオフィリアの概念、および、環境倫理に関する意識・態度の実態調査を行う予定であった。しかし、バイオフィリアの概念を導入した環境教育が、欧米において想定以上に幅広く展開しており、バイオフィリアを活性化する環境教育の特質を明らかにするためには、更なる文献調査を行う必要が出てきた。特にアメリカ・カナダにおいて、初等教育におけるバイオフィリアを活性化するための教育の議論・実践が多く行われており、それらの文献調査を引き続き行っている状況である。 さらには、申請者がこれまで行ってきたディープ・エコロジーの視点を導入した環境教育とバイオフィリアとが関連した教育理論・実践研究が盛んに行われていることが明らかになったため、バイオフィリアを活性化する環境倫理教育プログラムの開発を行うに当たって、申請者の過去の環境倫理教育実践の結果を再分析することとした。 以上より、達成度を総合的に評価した結果、文献調査は当初の計画以上に進展しているが、実態調査の実施までには至っていないので、全体としてやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
欧米において想定以上に幅広く展開しているバイオフィリアの概念を導入した環境教育について、その理論的・実践的研究についての文献収集と内容分析を引き続き行う。特に文献調査では、欧米における、ディープ・エコロジーの視点とバイオフィリアとが関連した環境教育(エコロジカル・リテラシーの理念に基づいた環境教育)の理論と実践の分析を進めるとともに、バイオフィリア仮説に基づくバイオフィリック・デザインを取り入れた初等教育の理論と実践を探る。そして、これまでの文献調査をもとにして、バイオフィリアの概念を導入した環境教育の特質についてまとめる。 次に、上記の文献研究の結果をもとにして、質問紙を作成して意識調査を行い、日本の小学生・中学生・高校生のバイオフィリアの概念、生物多様性の重要性の認識、および、環境倫理の視点に対する意識の特徴を明らかにする。さらに、文献調査の結果、意識調査の結果、および、申請者のこれまでの環境倫理教育プログラム実践の結果の再分析をもとに、生徒のバイオフィリアへの気づきを促し、環境倫理意識を高め、環境保全に寄与する態度と行動力を育成する高校生物の生態学分野における環境倫理教育のあり方を検討する。
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