研究課題/領域番号 |
16K13571
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
石田 喜美 横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (00612996)
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研究分担者 |
寺島 哲平 常磐大学, 人間科学部, 講師 (30433569)
名城 邦孝 常磐短期大学, キャリア教養学科, 准教授 (90623421)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 情報リテラシー / 大学図書館 / つながる学習 / ゲーム / ゲーミフィケーション |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、国語科教育における「新しい能力」としての情報リテラシー育成を目的とした学習プログラムを開発することである。最終的には、読書教育学・図書館情報学の知見に、ネットワーク型社会のリテラシー学習論・「つながる学習(Connected Learning)」の学習デザインを適用した、情報リテラシー学習プログラムを開発することを目指す。平成28年度は、(1)先行研究の検討に基づくプログラム「Libardry Stage-1」および「Libardry Card版」の開発と、(2)それらのプログラムの試行およびそこで生起した学習の調査・分析を行った。 (1) の実績として、情報リテラシー教育やゲーム・デザインについて先行研究・先行事例を収集・検討し、ゲーム型の情報リテラシー学習ツールを開発したことを挙げることができる。「つながる学習(Connected Learning)」の学習論に着目し、その視点からゲーム・デザインの教育・学習的意義を検討するとともに、現在、ゲーム・デザインを応用して行われている数々のリテラシー教育の事例を集めることで、ゲーム・デザインを応用した図書館探索型のプログラム「Libardry Stage-1」およびカードゲーム型の情報リテラシー学習ツール「Libardry Card版」を開発した。 (2)の実績として、(1)で開発したプログラムを試行し、そこで生じた学習についてエスノグラフィックな手法による学習実態の調査を行ったことを挙げることができる。「Libardry Stage-1」については大学の学生団体による協力を得て、「Libardry Card版」については大学図書館司書らによる調査協力を得て、これらのプログラムを試行的に実施することができた。現在、これらのエスノグラフィックな調査によって得られたデータを分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
大学の学生団体のみならず、大学図書館の司書らによる調査協力を得たことで、当初の計画よりも大幅に研究を進展することができている。 当初の予定では、(1)先行研究・先行実践を踏まえて、ひとつの学習プログラムを開発する予定であったが、当初予定していた図書館探索型のプログラム「Libardry Stage-1」のみならず、多数の学生たちを対象に情報リテラシー学習の導入として使用可能なプログラム「Libardry Card版」を開発できたことは大きな進捗であるといえる。 また「Libardry Stage-1」について大学の学生団体による協力を得て試行版の実施ができただけでなく、40名近くの大学図書館司書らに協力を得て、「Libardry Card版」について試行を行うことができたことで、大学生のみならず、大学図書館司書の専門的な知見からプログラム開発の示唆が得られたことの意味は大きい。 また、当初の予定では、プログラム開発と試行およびその調査・分析のみを行う予定であったが、(1)の理論的検討の成果や(2)の試行の成果を部分的に論文・学会発表等で公開することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、当初予定したとおり、本年度の研究成果を経て、(3)学習アプリの企画・開発を行うことを予定している。具体的には、教育・学習アプリの開発実績のある企業に研究協力を依頼し、大学図書館、学校図書館、公立図書館で利用可能な情報リテラシー教育用の学習アプリの開発を行う予定である。応募者らの研究チームがアプリの企画を行いその実装を企業に委託することで、企業の持つ学習アプリ開発のノウハウを活かした、ユーザビリティの高い学習アプリ(ベータ版)を開発する。 平成28年度には、「Libardry Stage-1」および「Libardry Card版」という2つのゲーム型プログラムを開発したが、学習アプリの開発にあたっては、このうち「Libardry Card版」をベースに開発を行っていく予定である。現在「Libardry Card版」については、大学図書館司書らを対象にした試行のみを行っている状況であるため、読書や図書館利用の状況や学力等に差のある複数のグループの学生を対象にした実践調査を追加で実施し、データを集積することで、より大学生の学習ツールとして利用しやすい学習アプリを開発することへとつなげていきたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、研究メンバーのうち2名が、勤務校の都合により「大学教育研究フォーラム」等、成果発表を行うための研究大会に参加できなかったことである。当初は原則として、3名以上の研究メンバー(研究協力者含む)で、研究成果の発表参加を行うことを予定していたが、1~2名のみでの発表を行うことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
初年度の研究が予想していたよりも進展し、情報リテラシー学習用のプログラムを2つ(当初の予定では1つ)開発し、その試行版を実施することができた。次年度はこれらの正規版を開発する必要があり、そのためにゲーム型学習ツール制作代金が当初予定より多く必要となることが予想される。初年度の予算で剰余した金額については、このゲーム型学習ツール制作費の増額分に使用する予定である。
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