本研究の目的は、障害を持つ子どもを対象とした主権者教育としての法教育のプログラム開発にある。これまでの日本の法教育研究は、健常児を対象としたものが主であり、障害を持つ子どもたちを対象としたものは、皆無であった。しかし、障害を持つ子どもたちもかけがえのない主権者である。主権者教育の重要性が叫ばれている昨今、障害を持つ子どもに焦点を当てた主権者教育≒法教育の在り方について検討していく必要があるだろう。以上の目的を達成するため本研究では、(1)障害を持つ子どもの理解のための研究(文献研究・国内調査)、(2)障害を持つ子どもの法教育のあり方の研究(国内調査・量的調査・質的調査)、(3)障害を持つ子どもを対象とした主権者教育≒法教育カリキュラム(単元)の枠組みの設計(文献研究・実践研究)、(4) 障害を持つ子どもを対象とした主権者教育≒法教育授業の設計・実施・改善(実践研究)といった4つの段階を追いながら、研究を遂行した。(1)については、先行事例である大阪府・関本祐希氏に対する質問紙調査等を行った。(2)については、関本氏の他、松本栄次氏や花田将氏の研究を参考にした。(1)や(2)の研究を踏まえ、主権者教育として必要な資質・能力としての「候補者選択力」の育成が十分でないことを突き止め、(3)においては、「候補者選択力」の育成を図る授業の枠組みを設計し、(4)において、第二東京弁護士会所属弁護士の協力の下、授業を実践、開発し、その効果を検証した。また、「候補者選択力」の前提として、「合理的な選択力」の育成が重要であると考え、岐阜県弁護士会所属弁護士の協力の下、授業を実践、開発し、その効果を検証した。他、気がかりな子どもと通常学級で学び合う場面で「気がかりな子ども」の成長を見取るため、岐阜県弁護士会所属弁護士の協力の下、授業を実践、開発した。
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