研究課題/領域番号 |
16K13585
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研究機関 | 秀明大学 |
研究代表者 |
寺前 洋生 秀明大学, 学校教師学部, 准教授 (90599028)
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研究分担者 |
片山 豪 高崎健康福祉大学, 人間発達学部, 教授 (60635754)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | OSPE / 客観的実験技能試験 / 教員養成 |
研究実績の概要 |
本研究では,理科の教員養成において,学生が将来指導することになる実験技能を精査し,客観的な評価を行うための試験並びに評価方法を開発することを目的としている。医・歯学部・薬学部等の医療系教育にでは,臨床実習に入る前にCBT(Computer Based Testing)やOSCE(Objective Structured ClinicalExamination:客観的臨床能力試験)が課される。一方で,教員養成系学部では教育実習前には特に試験などを受けずに実習に取り組むことが可能である。また,一部の自治体ではあるが,教員採用選考試験において理科の実験実技が課されることもある。 理科の教員にとって,指導する内容の実験技能は確実に修得しておかなければならない技能である。モンストレーターとしての見せ方や安全に配慮した操作を修得しておくことが求められるが,体系的な試験や評価は確立されていない。そこで,本研究では生物学分野では小・中学校のどの学年でも使用する顕微鏡の操作を中心に,それらに付随する試薬の調整や顕微鏡法本の作成に関して課題の提示,採点者による差が出ない評価表の作成を試みて,実際の試験を実施して検証を行った。 また,中学校・高校・大学の立場から理科教員の養成における実験技能の習得を考える試みとして,平成29年8月には日本理科教育学会第67回全国大会において,課題研究「教員養成段階における理科実験の質を保証する取り組み」と題して4名の発表とディスカッションを行った。 客観的実験技能試験(OSPE:Objective Structured Practice Examination)として,実験技能の客観的評価を行うための出題課題や評価法の検証データや学会では様々な立場から理科教員に求められる資質・能力が取り上げられているが,体系的にまとめて研究論文としてまとめる用意をしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで,理科の教員養成における客観的実験技能試験(OSPE:Objective Structured Practice Examination)を開発するため,顕微鏡の操作ならびに標本作成に関する試験課題,評価項目を作成した。それらの課題,評価項目を用いて,集中講義形式で開講している理科実験教育法の生物学分野の試験において,検証を行った。また,顕微鏡標本を錯視絵する際に使用する試薬の調整等も課題として出題し,計算過程などの検証も行った。 評価項目については,複数の教員が試験官として評価を行ったが,概ね同じ程度の結果を得ることができ,評価項目の妥当性,評価のしやすさなどに難点があるようには見受けられない。試験の実施に関しては,同時に2人程度が妥当であり,それ以上になると個人の作業過程などを見落とすことがあることから,正当な評価を行えないことが明らかになった。 また,教員養成段階において身に付けておくべき実験技能には,各学校種や教員によっても異なる意見を持っている。また,教員養成においても,初等教育を中心としているのか,中等教育を軸に考えているのかによっても,求める実験技能は異なってくる。そこで,日本理科教育学会の課題研究として,中学校教員,中学校管理職,初等を中心とした教員養成大学教員,中等を中心とした教員養成大学教員がそれぞれの立場から,教員に求められる実験技能について知見を持ち寄り,学会参加者とともに議論を行った。 当初の研究計画では,上記の他に研究論文執筆・投稿までを終えるように計画していたが,現在のところ研究論文の投稿にまでは至っていない。現在,研究論文投稿に向けてデータの整理並びに論文執筆に向けて作業を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
現在までのところ,生物学分野における顕微鏡操作,標本の作成に関する客観的実験技能試験の課題ならびに評価項目の作成とその検討を行った。また,課題・評価項目の作成のために,現職教員や教員養成の立場から日本理科教育学会の課題研究を通して議論を行い,様々な意見を得た。 今後の研究の推進方策としては,現在までに試行実施した生物学分野のデータをまとめ,論文化することと,理科教員に求められる実験技能を網羅できるよう試験課題・評価項目を作成し,精査・検証していくことを考えている。 一部の自治体では,教員採用選考試験においても実験実技が課されており,学校現場において,教員が安全に配慮し,教育的に効果のある実験授業を行えることが求められている。例年,理科の実験中の事故が報道されているが,実験を通して結果から事実を捉え,考察する力を育成するためには,実験は不可欠である。教員養成系学部の責任として,資質・能力を保証できる教員の育成のために,客観的実験技能試験の開発・普及に取り組んでいく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の当初の計画では,最終年度までに論文執筆・投稿も含めた成果を発表する予定であった。しかし,論文投稿にまで至らず,研究期間の延長申請を行っ た。そのため,研究費においても次年度繰り越しが生じた。 使用計画については,論文執筆・投稿のための費用として使用することを想定しており,研究に必要な書籍や消耗品等に使用する予定である。
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