教員養成において,授業スキルやカリキュラム開発だけではなく,中等教員(理科)や初等教員志望の学生には実験技能の修得が求められている。少子化に伴い,地域によっては理科の教員が一人体制の学校もあり,試薬の調整や実験技能の指導などを先輩教員から教えてもらえるという状況にない新任教員も存在している。教員養成段階において実験技能は確実に身に付けておく必要がある。本研究では,教員養成段階で求められる実験技能を精査し,それらの技能が修得されているかを「客観的実験技能試験」として実施するための試験項目の開発と,その有用性について評価し,教員養成に活用していくことを目的とした。 客観的実験技能試験は,医学教育における客観的臨床能力試験(OSCE)を参考に,教員が学校現場で求められる実験技能を学部段階で身に付けているかを明らかにすることを目的としている。そこで,初等・中等教員が実験指導や準備で対応することの多い試薬の調整と顕微鏡操作を取り上げ,技能の評価法の開発・検証を行った。評価法の作成においては,指導場面で注意すべき点や演示の際に気を付けるべき点をピックアップし,複数の試験官が「よくできている(○)」「できている(△)」「できていない(×)」の三段階で評価する評価票を作成した。試行試験では,2名の大学教員を試験官とし,試薬の濃度調整並びに顕微鏡観察を試験科目として行った。2名の評価票をもとに,評価の齟齬が無いかを検証した結果,高い確率で評価が一致しており,実験技能の評価に妥当性があることが明らかとなった。 また,共同研究先では,初等教員志望の学生に水溶液の調整の試験を行い,検証を行った。 研究の方向性を検討するため,2017年度には日本理科教育学会第67回全国大会において,課題研究発表を行った。また,本研究の成果として論文発表を考えており,執筆中であるが発表には至っていない。
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