研究課題/領域番号 |
16K13591
|
研究機関 | 新居浜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
濱井 潤也 新居浜工業高等専門学校, 一般教養科, 講師 (10612369)
|
研究分担者 |
平野 淳一 甲南大学, 法学部, 准教授 (10550949)
高橋 祥吾 徳山工業高等専門学校, 一般科目, 准教授 (10758337)
小川 清次 大阪府立大学工業高等専門学校, 総合工学システム学科一般科目文系, 教授 (30413800)
佐伯 徳哉 新居浜工業高等専門学校, 一般教養科, 教授 (50757672)
鹿毛 敏夫 名古屋学院大学, 国際文化学部, 教授 (60413853)
手代木 陽 神戸市立工業高等専門学校, 一般科, 教授 (80212059)
芥川 祐征 新居浜工業高等専門学校, 一般教養科, 講師 (80757542)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 主権者教育 / 18歳選挙権 / 市民性 |
研究実績の概要 |
平成29年度における本科研の成果は、2本の論文を平成30年1月発行の『新居浜高専紀要』第54号に投稿したことである。第一の論文「戦後カリキュラム政策史における主権者育成理念の変容過程―社会的状況と教科課程における単元構成の対応関係を中心に―」においては、本科研の研究テーマである「主権者教育」が近代日本においてどのように捉えられ、実施されてきたかを歴史的にまとめたものであり、今後のカリキュラム開発のための基盤を築き上げたと言えるだろう。 また第二の論文「高等専門学校の社会科カリキュラム編成類型と主権者教育の課題」では、本科研が平成28年度に実施した全国の工業高等専門学校の社会科カリキュラムの実施状況を調査した結果のまとめと分析報告である。これによって主権者教育を実施する際の高専の社会科教育が抱えている問題点、すなわち第一に人件費削減による人的条件の厳しさ、第二に学習内容が教員の裁量に委ねられているため、統一的な質保証の基準を確立するのが困難である点、第三に学習内容が教員の専門分野に依存していることが多く、他教科との連携やカリキュラム上の位置づけが曖昧であること等が明らかになった。今後本科研では、この点を踏まえ主権者教育カリキュラムの先行的開発を進める計画である。 加えて平成29年度の本科研の活動として、研究分担者全員で各高専と大学とに分かれて、「主権者意識に関するアンケート」を実施した。学生が18歳選挙権や現在の国内・国外の政治情勢、民主主義のシステムそのものに対して何を考え、どのような疑問を持っているのかを全18問のアンケートで調査した。平成30年度にはこれらのアンケート結果を分析し、学生たちの主権者意識についての報告まとめる予定である。 最後に、平成30年2月に本科研の例会を開催し、各研究分担者の主権者教育の実践例の報告・意見交換を行うことで、教員スキルの向上を図った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本科研の現在までの進捗状況としては、(2)おおむね順調に進展しているを選択することが妥当であると思われる。 本科研の申請書に記載された平成28年度の研究計画は、収集した資料に基づき、各研究者の担当授業・専門領域に応じたカリキュラムの改訂・開発とその実践に分野別に取組、その成果を持ち寄って研究会を開催し、また公開授業を実施することで、情報交換・共有と授業内容の改善を総合的に検討することである。この点については、該当年度に行った全国高専の社会科カリキュラム実施状況調査の結果を資料として平成29年度には「高等専門学校の社会科カリキュラム編成類型と主権者教育の課題」として『新居浜工業高等専門学校紀要』第54号に投稿している。また公開授業についても平成28年度、平成29年度共に新居浜工業高等専門学校の社会科系教員による公開・研究授業を実施しており、意見交換と授業内容の研鑽を行っている。 続いて平成29年度の本科研の研究計画は、上記のカリキュラム改訂・開発作業を継続するとともに、科目間を横断した連携実践の可能性を研究会で検討することである。加えて、2016年夏の参院選をはじめとして、その他、各地方の選挙などの結果から生じると予想される社会的な要請や生じた問題を、研究に取り入れていくこととしている。まず平成29年2月に開催された本科研の研究例会においては、前年の活動を踏まえてそれぞれ主権者教育カリキュラムの開発と実践について報告しており、各科目間の連携の前段階としての情報交換を行っている。また2017年10月には衆議院選挙が行われており、その直後に初めて投票を行った18歳の学生も含めて「主権者意識に関するアンケート」を実施している。その結果の分析・報告については、次年度の課題としているが、ここまでの現時点での研究の進捗状況としては、やはりおおむね順調に進展していると結論付けてよいだろう。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度、平成29年度の研究成果を受けて、平成30年度は本科研の最終年度として成果をとりまとめることを中心として活動を行う予定である。 第一に平成29年度に実施した4高専・2大学の学生を対象として行った「主権者意識に関するアンケート」の結果のまとめ及び分析・報告を論文として作成し、『新居浜工業高等専門学校紀要』等に研究成果として投稿する。 第二に本科研の過去二年間の実践的活動としての、新居浜工業高等専門学校の社会科系教員による公開・研究授業の成果及び、各研究分担者による主権者教育のカリキュラム開発と実践報告の成果をさらに蓄積、ブラッシュアップを行い、本科研最後の例会での発表・報告と意見交換を行う。 またこれらの研究・実践的活動の成果については、高専フォーラム等での発表や、『新居浜工業高等専門学校紀要』等への投稿、また科研の業績報告書の作成と配布という形で広く社会に発信する予定である。 最終年度は以上の計画によって、18歳選挙権時代にふさわしい新たな主権者教育カリキュラムの開発を、その必要性の歴史的経緯の文献学的調査や、現在の高専の社会科カリキュラムの実態調査に基づく問題点の明確化、そして実際の学生たちの日本の政治情勢・政治システムに対する幅広いアンケート調査、加えてそれらを踏まえた分担研究者総勢8名が、各自4高専・2大学を舞台に実際に開発し実践した授業案の4つの成果を軸として完成させ、高専だけでなく高等学校教育や大学教育にも応用可能な、領域融合的な主権者教育のカリキュラム案、指導モデル、教材として社会に発信し、日本の18歳選挙権時代にふさわしい市民性を育成する教育体制の整備に貢献していくことを目的としたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度へ繰り越し計上する予定の残額80411円の内、80000円は、次年度の分担金と併せて統計解析ソフト(SPSS)の購入に充てる予定である。これは本科研の研究活動として平成29年に4高専・2大学を対象に実施した「主権者意識に関するアンケート」における学生の回答の傾向を、統計学の専門知識を有する研究分担者を中心に詳細に解析し、現代の学生たちの主権者意識のあり方を明確化するために必要な経費となる。 また残りの411円については、次年度の物品費等に充てる予定である。
|