高等教育機関に在籍する自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder: ASD)のある学生の合理的配慮に関して、合理性を担保する根拠は乏しい。 そのために、国内外他施設から研究論文として報告された支援事例74事例に基づいて、エキスパートコンセンサスを得るための調査を実施した。調査項目は、各支援事例を1項目として、合理的配慮として妥当かどうかを問うものとし、1 点(全く同意できない)から 9 点(完全に同意する)までの9段階での評価を求めた。 予備的調査として、静岡市こころの健康センターで実施された「障害者差別解消法施行後の学生支援の在り方」講習会に参加した専門家17名を対象に、予備的調査項目の回答を施行した。記述された支援の内容が十分に理解できない」と答えた項目が、4名の項目が1項目、3名の項目が4項目、2名の項目が4項目、1名の項目が15項目であったが、いずれも50%以上の回答者が回答可能であったことから、74項目全てを用いて本調査を実施することとした。 本調査はデルファイ法を用いて行い、第2ラウンドでは、第1ラウンドで得られた統計結果を添付し、再度 9 段階での評価を求めた。この段階で平均点7点以上、70%の回答者が7点以上をつけている項目をコンセンサスの得られた項目と判定した。 調査の回答者(エキスパート)は全国高等教育障害学生支援協議会に平成30年12月4日の時点で法人加盟している高等教育機関97校の支援者とした。97校全てに郵送で調査の概要、依頼を送付し、協力が得られた42名が調査に参加した。42名中32名が第2ラウンドの調査まで回答した。解析対象は32名の第2ラウンドの回答とした。結果、74項目のうちコンセンサスが得られたと判断された項目は74項目のうち30項目(40.5%)であった。
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