研究課題/領域番号 |
16K13597
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
宮地 弘一郎 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (40350813)
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研究分担者 |
渡邉 流理也 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (40750120)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 肢体不自由 / 視線 / アイカメラ / ICT |
研究実績の概要 |
本研究は,行動表出がきわめて困難な重度肢体不自由児のインクルージョン促進のための,アイカメラとタブレットを活用した携帯型視線情報共有システム(Portable Eyes Sharing System;PESS)の開発を目的としている.本年度は以下の4課題を行った。 課題1.PESS開発のための情報収集(宮地・渡邉):国内外の学会,研究会において研究動向の調査を行い,簡便なアイカメラに関する最新の開発状況を整理した.アイカメラ情報をリアルタイムで抽出しコミュニケーションサインとして用いる技術的可能性を明らかにした. 課題2.アイカメラの遠隔通信システムの検討(宮地):アイカメラ画面をタブレットに表示するシステムを試行した.複数の通信システムを検討し,Wifiが最も有効であることを明らかにした. 課題3.リアルタイム注視判定プログラムの検討(宮地):アイカメラにおけるリアルタイム注視判定プログラムを開発した.重症心身障害児への適用を踏まえ,注視持続時間に基づいて評価を行うプログラムを作成し,健常者を対象に試行した結果,注視点の推移をリアルタイムで評価することができた.また,注視の直後に頭部を移動させた場合は注視対象を把握することが困難など,PESSを使用する上でのいくつかの制約が明らかとなった. 課題4.重度肢体不自由児用のアイカメラ測定補助ツール作成(渡邉,宮地):アイカメラ用ゴーグルについて,ベッド上での測定が可能なゴーグルを作成し,事例を対象に検討した.また,定位反射と持続的注意を喚起するキャリブレーションボードを作成し検討した.ゴーグルについては装着後の不快感の軽減ができた.キャリブレーション後に実施した映像呈示課題において,特定方向への注視および追視がある程度記録できたが,キャリブレーションの精度について更なる検討が必要と思われた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた課題について予定通りに実施することができ,さらに,当初は予定していなかったが,重症心身障害児を対象にアイカメラ測定のデータを得ることができた. キャリブレーションの精度に課題を明らかにすることができ,次年度予定している重度肢体不自由児への本格的な試行に向けて準備する状況が整った. また遠隔通信に関しても,次年度に向けた課題を整理することができた.
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今後の研究の推進方策 |
H28年度の成果を踏まえて,H29年度以降は以下の課題を行う. 1.PESS活用に関する基礎研究:健常者を対象に、PESSを試行し,有用性と限界を検討する. 2.重度肢体不自由児を対象としたPESS試験に関する予備検討:アイカメラ測定のためのキャリブレーションツールとゴーグルに関する改善を,事例を対象とした検討を含めて行う.さらにこの改善と並行しながら,PESSの試験的実施を行う. 3.重度肢体不自由児の日常場面におけるPESS活用の検討:療育場面において,PESSが有用と想定される状況を選定し,PESSによる支援者,共同生活者への視線情報共有を実施しその効果について評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
H28年度は,PESS開発のための準備として,アイカメラ購入およびICT環境の整備を行った.この環境整備において,当初の想定以上に費用が必要であることが分かったため,次年度経費を一部前倒し請求し,H28年度後半の調査経費等に使用した.しかしながらこの調査において,当初の予定以上の成果が早い段階で挙げられたため,前倒し分の一部の費用を次年度の調査経費として使用することとした.
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次年度使用額の使用計画 |
今年度残額は,H29年度請求額とあわせて,主にH29年度研究における調査旅費として使用する.
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